ゴミ箱島代表ひもる

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のゴミ箱島代表ひもるのレビュー・感想・評価

3.5
まず何より、戦闘シーンは息をのむほどかっこいい。技の表現の面白さはもちろん、それぞれのキャラクターがかっこよく表現されている。そして、空間を駆け巡るキャラクターたちのダイナミックな動きも素晴らしい。TVシリーズと同じようなアクションの魅力があった。
炎の呼吸の技は最高だった。特に終盤は完全に煉獄祭。炎の技がとてもかっこよくて、映像映えしていた。
あと、煉獄と上弦の参、猗窩座の戦いは最高だった。これぞジャンプらしい胸熱な展開。まだ主人公の手の届かないところにいる強者同士のバトルは、どんな作品でも熱くなる。正直、主人公のバトルよりもそういうバトルの方が面白いことが多い。炭治郎が戦っているところよりも柱が戦っているところの方が好き。だからこのクライマックスが一番好きだし、なにより煉獄さんの死に方がかっこよすぎる。はっきり言って今回の煉獄の役割は、上弦の鬼がいかに絶望的に強いかを示すためのかませに過ぎない。でも、ただ犠牲になって死ぬのではなく、最後の最後まで負けられない敵と戦い、周りの人たちを守り、炭治郎たちに大切なものを伝えて役割を果たした上で死んでいく。このように、登場人物の死に方に愛を感じることができるのが、『鬼滅の刃』のいいところ。煉獄はこの作品では短い時間しか登場しないキャラクターだけど、多くの人の記憶に残る名キャラクターになった。
けど、クライマックスがあまりに素晴らしいから、それまでのストーリーがあまり印象に残らなかった。
煉獄と猗窩座のインパクトが強すぎて、観た後に魘夢を語る人は少ないと思う。記憶の彼方に消えてしまっているかもしれない。この映画は3幕構成で、1幕目は夢からの脱出、2幕目は現実での魘夢との戦いで3幕目は煉獄と猗窩座の戦い。その中でも特に第一幕はちょっと退屈だった。
夢からの脱出を含め、魘夢との戦いは炭治郎たちに有利に進みすぎているように思えた。もちろん、ある程度都合よく話が進むのは仕方のないことだけど、今回はかなり都合がいいように感じた。
夢から覚めるためには、自分が夢の中にいることを自覚し、脱出する方法を見つける必要があるけど、この2つはどちらも炭治郎が自分で気づいたことではなく、何の脈絡もなく現れたもう1人の自分や父親らしき人物が教えてくれたことだった。都合のいい展開。原作を読んでいない人には、唐突すぎて意味がわからないと思う。原作では、炭治郎の本能が自分と父親の姿で警告したと説明されているけど、意味不明。なんか、適当に説明されているような気がしてならない。無意識の領域に侵入し、精神の核を破壊しようとする敵に、みんなが勝手に反応して対処してしまうのもつまらない。本来、夢の中に閉じ込められて無防備になるのは非常に危険なはずなのに、みんなが都合よく対処するから、危機感があまりない。ジャンプには精神攻撃をする悪役がたくさん出てくるけど、こんなにあっさり倒されたのは初めてだと思う。
次に、現実での戦いがあるからかもしれない。『鬼滅の刃』は良くも悪くもテンポの良い物語だから。問題は、このテンポの良さのために、失われてしまった部分が多いことだと思う。
2幕以降、確かに戦闘シーンは派手でカッコいいけど、正直、敵があまり強く見えない。敵の殺傷能力は今までの敵と比べると高い訳では無いし、味方が多く煉獄が強すぎるのと、炭治郎たちがほとんど怪我をしないので、前の敵よりずっと余裕で勝った印象がある。今回の『無限列車編』はパワーインフレが一番起きてた話だったから、そのインフレに敵がついていけなかったようで、結局はその後の戦いの前哨戦に過ぎなかったような気がする。仕方ないのだけど、以前炭治郎が戦った累よりずっと強いはずなのに、あまり強く感じなかったのが残念。もう少し苦戦してほしかった。また、2幕まで全体的にテンポが悪かった。シーンとシーンの間に妙な間があったり、炭治郎の状況説明が無駄に長かったり、つまらないギャグがちょくちょく挟まれたりして、何度も勢いを削がれ、それも面白くないと感じた原因だと思う。
とにかく2幕までは作画のクオリティは十分なのだけど、原作からするとちょっと微妙なシーンで、ufotableでもあまり改善できなかったよう。細かいことだけど、3幕にも不満がある。
今回の映画で嬉しかったのは、原作にはない煉獄の参ノ型を見せてくれたこと。原作にないシーンがいくつか追加されていたけど、すでにもう見せているものもあったから、もう一度見せる必要はなかったと思う。すでに出ている技を使うのではなく、原作で見せられなかった技を見せてほしかった。あそこで勢いが止まってしまったようで残念。