ノラネコの呑んで観るシネマ

億男のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

億男(2018年製作の映画)
4.4
お金って何だろう?
これはなかなかにユニークな、お金に関する寓話。
佐藤健演じる借金まみれの主人公が、宝くじで3億を当てる。
しかし旧友でIT長者の高橋一生に使い方指南を頼んだところ、丸ごと持ち逃げされてしまい、必死に探し回るうちに、人間を変えてしまうお金の本質に迫ってゆく。
主人公は、友人の消息を追って三人の大金持ちを訪ねてゆくのだが、それぞれ異なった形で金に囚われた三人が、反面教師的メンターとなるという構造。
同時に、主人公と友人の過去が並行して描かれることで、なぜ友人は金を持って消えたのか、その真意が徐々に明らかになってくる。
お金と人の関係を描いた作品は多いが、お金そのものの存在の意味を、正面から描いた作品は珍しいのではないか。
原作は川村元気の小説だが、ベースになっているのは、劇中にも出てくるある有名な古典落語。
まあ知ってる人にはこの話が出てきた時点で、全体像が見えるだろう。
観ながら、「自分にとってお金とは?」と考えてしまったので、その時点で映画は成功していると思う。
しかし、もし3億当たっても全然使い道が思いつかないので、そういう人のところにはお金はやって来ないのだろうな。
たぶん私は、件の落語の主人公と同じく、大金持つと調子にのって不幸になるタイプな気がするw