TS

億男のTSのレビュー・感想・評価

億男(2018年製作の映画)
2.9
【金が人を支配する】68点
ーーーーーーーー
監督:大友啓史
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:116分
ーーーーーーーー
2018年劇場鑑賞90本目。
主演二人以外の扱いが雑だなと感じました。藤原竜也も北村一輝も池田エライザも、後から更に絡んでくるのかと思いきやその場限り。題材は中々面白いと思ったのでややもったいなかった印象です。

家族がいる一男は兄の借金に背負われ、3000万円を返済していく日々に追われていた。しかし、そこで強運にも宝くじの一等をあてるのだが。。

まず、薄々と知っていましたが、宝くじで高額を当てた人に配られる本があるようです。金は人を変える。これは間違いないようでして、いきなり手元に3億円があったら人は何をしてしまうかわからない。それで皮肉にも人生破綻をしてしまっている人もいる模様。そして当事者の気持ちになると、戸惑いを隠せない。確かに今自分が3億円当たったとしてもとても周りの人に言えない気がします。どれだけ信頼していても、金目当てで自分に近づいてくるのではないかという疑心暗鬼に陥ってしまいます。今までこのレベルの金額を当てた知り合いを僕は知りませんし、恐らく他の方もそうでしょう。もしかしたら近くの人で当てた人がいるかもしれませんが、それは口外していないだけなのでしょう。

今作は金が人を支配するという構造をしつこく強調しています。人は食べないと生きていけない。食べるには金が必要。自分で狩猟をするならまだしも、現代世界においてそれは不可能に近い。ただの紙切れなのにまるで神様。この紙切れのお陰で命を救われた、はたまたこの紙切れのせいで命を落とした人は何人いるのでしょうか。そんな皮肉な人間世界を物語ってくれる作品であり非常に興味深い。金が人を支配するというのは強ち間違いではなく、特にモロッコで主人公たちに道案内をした男が豹変するシーンがそれを物語っています。

しかし、今作は後半からややおかしな方向に進んでいきます。評価できるのはせいぜいモロッコがロケ地だということくらい。自分が大学の時に研究対象としていたジャマーア・エル・フナー広場が出てきたのも嬉しかったですし、雄大なサハラ砂漠の砂砂漠を拝めたのも目の保養となりました。ただ、前半のコメディ部分と比べると著しく逸脱している。今作の言いたいところは後半にあるのでしょうが、これならば前半のようなコメディを貫き通し、エンターテイメント性に富んだ作品にした方が良かったのではと思いました。中途半端にシリアスになってしまったのが今作の敗因ではないかと感じました。悪くはなかったですが、やや惜しい作品でした。
TS

TS