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未来のミライのtakのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
2.6
細田守監督作でこんなに期待を裏切られたのは初めて。「時かけ」と「サマーウォーズ」は愛してやまない作品だし、世間で評価の厳しい「おおかみこども…」はファンタジーなのにキツい現実の部分を逃げずに描いているのは個人的にはかなり好きだった。「バケモノ」は観てなくて、本作に挑んだのだけど、感じたのは最初から最後まで違和感だった。

妹が生まれて主人公くんちゃんが、親の愛情を奪われたと感じて癇癪を起こす様子がこれでもかと描かれる。子育て経験者目線だと、ここはかなりリアルを感じる部分。「あー、言われたよな、こんなこと。」と思いながら観ていた。くんちゃん側の理屈と親側の気持ちそれぞれに気づきが与えられる話ではあるのだけれど、それぞれのエピソードがどうも浅いと感じる。東京駅の迷子の場面では、不安な子供の気持ちが凝った映像で表現されているけれど、家族の中での自分の立ち位置をくんちゃんが理解する流れは納得はあっても新たなこっちの気持ちを揺さぶるような感動とは程遠く感じるのだ。

違和感の原因は声の演出と台詞にあるのではなかろうか。多くの人も感想に挙げているが、くんちゃんの声がもう少し上の分別ある年齢の男の子を感じさせるからだ。落ち着きさえある。さらに周囲の人々も含めて台詞に選ばれる言葉がいちいち堅い。例えば母親がくんちゃんとアルバムを見ながら「ひいじいじは戦時中にね、徴兵されてね」とか説明する場面。とても5歳児に話しかけている会話とは思えないのだ。

そりゃ文節を区切ってひと言ひと言しゃべるような現実的な台詞で全編やってたら、上映時間がいくらあっても足りないけれど、こんな喋りの会話じゃ分かってもらえるとは思えない。タイトルロールとして登場する、未来のミライちゃんは、各挿話でくんちゃんをナビゲートしてくれる存在でいて欲しかった。あまりにも出番が少ない。それはかなり残念。

ひいじいじが登場するエピソードは、馬やバイクに乗る疾走感があって素敵だったし、家族のつながりを強く感じさせていい場面。

ほぼ文句ばっかり言ったけれど、最後にもう一つ言わせて。子育て経験者の目線で最も違和感があったのは、あの段差の多すぎる家!階段とリビングに隣接した段差のある空間に、ベビー用の柵も置かずミライちゃんを置いておく無神経さ。あの階段だらけの家じゃ、くんちゃんは中庭に何度も落ちてアザだらけになってても不思議はない。冒頭登場するおばあちゃんが「建築家と暮らすとこんな家に住むことになるのね」とボソッと言うけれど、おばあちゃん、あなたの言う通り。小さい子供には危なっかしくて、見ちゃいられなかったよ。

と言う訳で、最後までファンタジーに気持ちを振ることができませんでした。失礼いたしましたw
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