ブタブタ

未来のミライのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

未来のミライ(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

これは細田守版の柳田國男『遠野物語』なのでは。
民話や民間伝承の世界を現代の都市を舞台に描いている。
ハッキリいってストーリーは殆どなくて描かれるのは「神隠し」や「変身譚」等々。

もはや渋谷に異世界へのゲートがあるとか狼男と結婚するとか、そんな「イベント」を介さずとももっとダイレクトに現実→非現実への移行が起きて現世と異界の境界線が曖昧模糊としてる世界。

時空間を超えてひいじいじや母親の少女時代と出会うくんちゃんは向こうから見たら座敷童子みたいな存在だろうし中庭が異空間と繋がってるくんちゃん家それ自体が「マヨヒガ」なのでは。

なので家族愛とか家族の物語とか感動とかそんなのはどうでもよくて前記の遠野物語や小泉八雲の『怪談』など日本に伝わる民話や不思議な話しの現代版アップデートとして見ると非常にクオリティの高くてシンプルに面白い作品でした。

圧巻だったのは未来の東京駅のシーンです。
あそこを見るだけでこの映画は大勝利だ!だと思います。
そして黒い新幹線のデザインといい禍々しさといいあれは完全に「妖怪」ですね。
多分子供を攫っていくハーメルンの笛吹きみたいな「人攫い」の具現化したモノでは。
くんちゃんと未来ちゃんが黒い新幹線に乗せられて「ひとりぼっちの国」に連れて行かれて、そこに未来のミライちゃんが助けに来るって展開であれば映画のクライマックスとして盛り上がったと思うんですが何故そうしなかったのか?
でも正直それだと『千と千尋』みたいな異界への旅とそこからの帰還というジブリ作品で繰り返し描かれた内容なので敢えてそうしなかったのかも?
でももっと黒い新幹線の内部がどうなってるのか、とか恐らくは賽の河原みたいな子供が行く煉獄である「ひとりぼっちの国」がどんな所か見たかったです。

それとくんちゃんの声、上白石萌歌さんについては男女の性差が曖昧な中性的な感じの幼児の声として上白石萌歌さんの声はあってたと思います。

ただ未来のミライちゃんの声、黒木華さんは逆にその芝居の上手さ、どんな役どんな場所にも溶け込んでしまう「カメレオン俳優」としてのスキルが災いして声にオーラがない(黒木華さんは『エヴァ』のカヲル君がエヴァとのシンクロ率を自在に操れる様に自らのオーラを出したり消したりする事も自在に出来るので普通の女子高生を演じる為に“敢えて”消してるのだと思う)と言うか主役の一人なのに単なるその辺の女子高生にしか見えないと言うか、ひいじいじは福山雅治さんそのものでしかない(笑)のに比べて折角黒木華さんをキャスティングした意味がないと思いました。
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