エイデン

ゴッド・オブ・ウォーのエイデンのレビュー・感想・評価

ゴッド・オブ・ウォー(2017年製作の映画)
-
16世紀 明朝嘉靖年間
海禁政策により中国沿岸では“倭寇”が横行していた
日本の海賊と言われる倭寇だが、その陰の首領は漢民族の王直だった
嘉靖36年(1557年)
明朝の総督 胡宗憲は、倭寇を一掃することを条件に王直に無罪を約束するが、それは罠であり投降した王朝は杭州で投獄される
それを知った王直の養子 毛海峰は、報復のため1000人もの倭寇を引き連れ浙江省 舟山岑港を占領
浙江総兵 兪大猷が率いる明軍はその制圧に苦戦を強いられていた
倭寇を率いる頭目 熊澤の正体は、王直と同盟関係にあった“松浦藩”の武士であり、戦術にも精通した男だったのだ
今日も敗戦を喫してしまった兪将軍に対し、胡総督は戚継光(元敬)という武将を援軍に呼び寄せる
継光は“雁門嶺の戦い”をはじめとする倭寇との戦いに連勝した文武両道の名将だった
その采配に良い顔をしなかった兪将軍を尻目に、元敬は過去の戦場での経験から海上戦に優れた兪将軍では陸上で勝ち目はないと踏んでいた
更に倭寇の兵に比べ、明軍の練度に難があることを胡総督に進言すると、新たな軍を創設することを約束させる
こうして新たに生まれ変わった明軍と倭寇との戦いが幕を開けようとしていた



将軍 戚継光率いる明軍と日本の海賊 倭寇の戦いを描いた歴史アクション映画

脚色は凄まじいけど大まかには史実
歴史の教科書にも勘合貿易の辺りに出てくる倭寇はアジア近海では割と暴れ回ってて、密貿易による多額の資金を元手に練度の高い兵と太刀という日本独自の武器で強力な軍団となっていた
倭寇というと日本人のイメージが強いものの、作中に名前だけ登場する王直のように、構成員には中国や朝鮮の人々もいたとされている
ちなみに王直は、鎖国の時代に貿易が許されていたことで有名な長崎の平戸に居を構えており、ポルトガルなど欧州の国々との貿易が盛んになった背景には彼の存在も大きい
作中のままにあらすじでも記載したけど、松浦藩に関しては幕藩体制ができていない時代なので誤植だと考えられる
松浦というと後の平戸藩に通じる松浦家のことなので、おそらく海の武士団と呼ばれた“松浦党”が正しい
松浦党は優秀な水軍であり、源平合戦や元寇、勘合貿易時の護衛として活躍しているものの、時折 作中のような倭寇行為にも及んでいたとされており、ただの賊ではなく武士としての戦い方を知っている連中が本作の敵として登場する
そうしたことからもわかるように、戦術や練度に長け、武器も強力という倭寇は明国にとって脅威となっており、未だ倭寇という言葉自体 日本人への蔑称として残っているほど影響力は凄まじかった
そんな倭寇を倒した明の英雄が主人公である戚継光で、作中で描かれるようにわざわざ倭寇の武術(剣術)や武器(太刀)の研究を行い対策を講じた名将である

ストーリーとしては戚継光の友情や妻との愛、倭寇の脅威に揺れる政治模様を描きながらも、ガッツリとバトルシーンを観せてくれるのが最高
義に厚く戦いにも優れた知将として描かれる戚継光も魅力的なんだけど、何と言っても推したいのは倭寇の頭目 熊澤
数多くの香港映画で活躍してきた倉田保昭が演じており、只者でない老獪な雰囲気で圧倒的な存在感を示している
また小出恵介演じる若き後継者 山川との絶妙な関係性のドラマも悪役らしからぬほどしっかりと描かれる
戚継光に勝るとも劣らない強さで常に立ちはだかり、その上ラストでは高齢とは思えない歯応えのある殺陣まで観せてくれる
めちゃめちゃ渋カッコいいので必見

パッケージに登場してるサモ・ハン・キンポーはそこまで活躍しないけど、日本人俳優も活躍する非常に見応えある作品なのでオススメです
エイデン

エイデン