エイデン

ゴジラ-1.0のエイデンのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

1945年、“大戸島”
太平洋戦争下、整備兵のみが配備されたこの島の簡素な守備隊基地に、1機の航空機が降り立つ
それを操縦していた海軍航空隊の浩一は、特攻任務に向かっていた途中で機体が不調を起こしたと訴えていた
しかし熟練の整備兵 橘によって、すぐにそれは嘘だと見抜かれてしまう
特攻任務に怖気づいていた浩一に対し、橘は寝床を提供するのだった
その夜 浩一らは突然の警報によって目を覚ます
事態を把握すべく、橘は部下に探照灯を使うよう命じるが、暗闇に浮かび上がったのはアメリカ軍ではなく、恐竜のような巨大な生物だった
それは深海魚が多数海に浮かび上がった日に現れるという、大戸島に伝わる怪物“呉爾羅(ゴジラ)”と思われ、辺り一帯を蹂躙していく
塹壕に隠れ息を潜めていた浩一は、橘から航空機に搭載した機銃でゴジラを撃退するよう頼まれる
恐る恐る航空機の操縦席に乗り込んだ浩一は、ゴジラへ慎重に照準を合わせるが、その巨体を目の当たりにして恐怖で動けなくなってしまう
そして恐怖からパニックになった1人が銃を撃ったことで、ゴジラは橘ら生き残った整備兵達に襲い掛かる
逃げようとした浩一は、ゴジラによって破壊された航空機の爆発で吹き飛ばされ、そのまま気を失ってしまう
翌朝 目を覚ました浩一が目にしたのは、完全に破壊された基地と、遺体が転がる惨状だった
片脚に怪我を負いながら唯一生き残った橘は仲間の遺体を集めながら、こうなったのは浩一が機銃を撃たなかったせいだと責め立てる
そして終戦を迎え、救助された浩一は本土へ戻る船上で橘から死んだ整備兵達が持っていた写真の束を渡されるのだった
同年12月
日本へと帰還した浩一は、あらゆるものが破壊された故郷 東京の姿を目の当たりにし、そこで実家の隣に住んでいた澄子と再会
澄子は空襲で子ども達全員を失っており、やり場の無い怒りを浩一にぶつける
更に浩一は澄子から、両親もまた空襲で死んだという事実を告げられるのだった
時は経ち、大きな心の傷を抱えながら必死で暮らしていた浩一は、とある闇市で男達に追われる女性 典子と出会う
典子は咄嗟に抱えていた赤ん坊 明子を浩一に託し、雑踏の中へ消えていく
戸惑いながらも赤ん坊を置き去りにも出来なかった浩一は、再び現れた典子にも気に入られ、自宅に押し掛けられてしまう
そこで浩一は典子から、戦争で両親を失い、空襲の最中 出会った人物が死の間際 自分に明子を託したことを聞く
同情した浩一は、そのまま成り行きで典子と明子との共同生活を送ることに
明子の世話は澄子にも手伝ってもらいながら、浩一は生活のため戦争中 海にばら撒かれた機雷を撤去する危険な仕事に就く
磁気機雷を避けるための木造船“新生丸”に機銃による機雷の破壊担当として乗り込むこととなった浩一は、船長の秋津、軍で兵器開発をしていた技術士官の野田、見習い乗組員の水島に迎えられる
浩一は夜毎、大戸島の悪夢に苦しみながらも典子に支えられ、生活も安定していく
また自立をしたいという典子は、明子の世話を澄子に頼んで、銀座で事務の仕事を始めるようになる
一方 1946年にビキニ環礁で行われた核実験クロスロード作戦以降、アメリカ軍は海中に現れる巨大な生物の存在を確認していた
その生物は太平洋を北上し東京方面に向かっていたが、ソ連との関係悪化を受け大規模な軍事行動が取りにくいアメリカは情報提供のみを行い、その対応を密かに日本へと一任する
1947年
浩一ら新生丸の乗組員達に、その巨大生物を足止めするよう命令が下る
情報を聞いた浩一は、その巨大生物がゴジラであると確信
アメリカの艦船すら破壊したゴジラに立ち向かうには心許なく、命懸けの任務であることは明確だった
それでもこのままゴジラを放置すれば東京へ上陸するものと思われ、また日本に返還された重巡 高雄が到着するまで足止めすれば良いとされており、出来ることをすると全員が心に決める
やがて新生丸の周囲に大量の深海魚が浮かび上がり、体長50mにまで巨大化したゴジラがその姿を現し、戦後日本は未曾有の危機に陥っていく



日本の実写『ゴジラ』シリーズ30作目にしてゴジラ誕生70周年記念作品

前作『シン・ゴジラ』から、また新たに世界観を一新して作られたリブート作
シリーズとしてはよくあるものの、初代『ゴジラ』の1954年という世界観から遡った時代が中心になるのは初
戦争により大きな傷を負った日本に、ゴジラという更なる絶望が襲い来る

近年でも『シン・ゴジラ』のゴジラは、これまでのシリーズとは一線を画し、人智を超えた絶対的な存在として、レジェンダリー・エンターテインメントの“モンスターバース”でも古代から地球の支配者だった神として描かれていた
それらが本家シリーズに比べると、軸は同じながら変化球で新しいゴジラ像を作った印象だけど、本作では本家シリーズの遺伝子をしっかりと受け継いだという印象
1954年版『ゴジラ』と同じく戦後に再び現れた戦争の象徴であり、時代背景もあって、恐ろしすぎる脅威として描かれている

平成シリーズっぽい佇まいにリアルなVFXによる造形、そしてクソかっこいい放射熱線の発射プロセスまで備えた怖いイケメンゴジラさんの存在感もさることながら、山崎貴監督の十八番である人間ドラマもかなり重厚
政府職員をストーリーの中心に置いてニッポン対ゴジラの形を取っていた『シン・ゴジラ』はじめ、過去のシリーズとは対照的に、政府の支援が期待できない中で、戦争を生き延びた人々が一丸となってゴジラに立ち向かう形となっている
死と隣り合わせの戦争で全てを狂わされた人々が、戦後復興と共に前を向こうとしている中で立ち塞がるゴジラ
対して主人公の浩一を演じる神木隆之介は、戦争を生き残ってしまった罪悪感、いわゆるサバイバーズ・ギルトに苦しむ元特攻隊員
浩一は一度絶望に叩き落とされた挙句に、泣きっ面にゴジラの地獄コンボを食らい、復讐心と同時に死に場所を求めるようにゴジラに立ち向かっていく
その姿を通して戦争の過ちを認め、なおも生きることへの讃歌に繋げているのは秀逸

相対的にややゴジラ成分薄めではあるけどインパクトは抜群だし、懐かしのBGMを流しながらの最終決戦とかはかなり胸熱で満足感も高い
火の玉ストレートな本家ゴジラをとても良い形で現代に蘇らせてくれた良作なので観ましょう
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