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赤い天使のncccoのレビュー・感想・評価

赤い天使(1966年製作の映画)
3.4
日中戦争下、前線に派遣された従軍看護師、西さくらに若尾文子。
初めのほう、ちょっとご飯食べながら観ていたらグロさ全開の手術シーンが立て続いて思わず吐きそうになりましたw 胃は綺麗な状態で観るのをおすすめします。モノクロでよかった、モノクロだからこそ見られる壮絶な切断シーンは目を背けたくなるほどに悲痛だけれど、この耐え難いシークエンスを通して観客は人間の愚かさが引き起こす戦争という不条理に向き合っていく。

いつ死ぬかもしれない戦場において「死」と常に隣り合わせだからこそ燃え上がる凄まじい「生」の描写、そして「性」の描写。男にとって、男であることの意義、男として死んでいくことの意味が繰り返される。

だけれどもそれに感化されるのは男たちだけではないんだ、
ギリギリの生のせめぎ合いの中、籠ったさくらのオンナの性が前線で溢れ出していく。
戦場で不能になった男たちを天使よろしく導き男として昇天させていくさくらは果たして本当に天使なのだろうか?冒頭から不幸なトーンで差し込まれるナレーションがラストにズーンと効いてくる。

朦々とした戦場の風景、ラストの銃弾線で遠くから敵がバラバラ走ってくるとことかめっちゃリアルでその切迫さに思わず息を吞む。
立ち込める砂埃の中に佇む傷一つない若尾文子、自らがつけた「しるし」に口づけるラストシーンがはっとするほど色っぽくて、重なり合うふたりを映す無機質な遠景のショットが、はっとするほど哀しい。

今やったら色んな意味で完全にアウトだろう筋書きを当時のトップ女優が身体張って演じてるって奇跡に目が眩む。脱いだ脱がないで騒ぐ今のマスコミが恥ずかしい。黄金期の日本映画は観れば観るほどに、ほんとに素晴らしい。
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