キナ

疑惑とダンスのキナのネタバレレビュー・内容・結末

疑惑とダンス(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ハッッ!!✋

たった一つの発言が人間関係を掻き乱し、感情の方向と本音と欲望を炙り出し、人間性を剥き出し、観客も巻き込み振り回し、激情と混沌の果てに辿り着く先の呆気なさ。
ゲラゲラ笑ってイライラして感情を揉みしだかれ、非常に楽しかった。

新婚を控えたカップルの祝福パーティー(クリスマスイブ)なんてこれ以上ないおめでたい場において繰り広げられる崩壊劇。

冒頭のコムラとマサオのやり取りから一瞬でコムラのカンナに対する想いが伝わってくる。
うわ〜複雑なんだろうな〜とニヤニヤ観ていたらまさかの爆弾投下。茫然自失、我々爆笑。マサオ退場。

皆んなが集まってからのカンナの普通な感じとコムラの謎フォローがまた滑稽で、突如始まる一人一人のスピーチタイムで心掴まれた。
サトシの見え見えな嫉妬心とツバキの抱える悩みとサナの密かな想い、バカバカしいけど面白い。
コムラ、電気は消すんだね。タツオじゃないね。あとサナは何か知ってるね。消灯。

ずぶ濡れのマサオ再入場、なぜ濡れてるかは頑なに口を割らない。(監督が濡れろって言ったから)
そこから始まる怒涛の泥試合。
やったのか!?やってないのか!?
ハッキリしないカンナに詰め寄るマサオ、口出しがウザすぎるサナ、中立的にまとめたいツバキ、どさくさに紛れたいサトシ、純情拗らせたコムラ。

とにかくパワーワードが多く、特にコムラの「あの時のゴムまだ保管してる」とボイスメモ録音時の細かい発言が本当に可笑しかった。
サナはサトシのことが好きなのかと思っていたらまさかのカンナ惚れパターン。たしかに自分を見てくれない人だ。イメトレって凄いね。
というかカンナさんモテすぎじゃない?

最初はひたすら笑っていたけど、だんだんと他人事ではなくなってきて恐怖すら感じてくる。
仲の良い友人グループがこんな一瞬でゴチャゴチャになるなんて思いもしなかった…となぜか自分のその場にいるような感覚に。
私だったらどの立ち位置になるだろう。ツバキかな。

唐突に訪れる終末。マサオの最後の一言に尽きる。
どっと押し寄せる疲れ。この数十分は何だったんだ。
何であんなこと言ったんだ、何でこんなことになってんだ、何であの時言わなかったんだ。

前情報もあらすじも全然チェックしないで鑑賞したので、こんなことが物語の中心になってくるとは思わず、その意外性も良かった。
人の心の機微って面白いし、親しい人の知らない面が意図せず見えてくるのは面白い。
「やったか、やってないか」にとどまらずもう一段階何か爆弾があったら良かったかなとも正直思うけど。

中盤とラストに挟まれるダンス、見ていて小っ恥ずかしくなってくるけどクセになる。
監督の「3、2、1、ハイ!」が聞こえるの好き。
最後のハグで一気に昇華された。愛してる。

ほぼ全編アドリブという事実に驚愕。
キャラはブレていないし、前に言ったことが後で繋がる伏線的なセリフもあったし、衝撃的な発言にもグイグイ食いついていくのでとてもそうとは思えなかった。
役者さんって本当に凄い。
トークショーで判明した撮影期間10時間やまさかの予算にも更に驚愕。
みんなボーナス出たら二宮監督へ献上してくれ。
キナ

キナ