Hally

万引き家族のHallyのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.4
"血"ではなく"絆"

パルムドールは伊達じゃなかった。いや、ちょっと衝撃的だった。完璧のハードルの低い自分は、あまりレビューで使わないよう自制してるんですが、今作のキャスティングに関してはもう…。完璧でしょ。完璧。邦画では、そうそう味わったことのない感覚に陥った。演出での伏線の張り方が凄い。柵越しに見つめる彼女の目。あの向こうになにを見ているのか。あの子がなにを求めているのか。あの終わり方…。あれって…。

今作は季節ごとの"匂い"がする映画だ。コロッケ、汁の染みたお麩、突然の雨、素麺、音花火、茹でトウモロコシetc…。季節を意識させるモノが沢山登場する。そして印象的だったのは日本で昔から伝わる"迷信"が沢山出てくること。これってどれも"日本らしさ"と捉えがち。昔の馬鹿な私だったらそこまでにしか捉えられなかった。でも季節の"匂い"がするモノや"迷信"ってどの国にも存在してる。これらが映画に出てきた時の感覚って世界共通なんじゃないだろうか。知らない国の知らない食べ物、言い伝えでもそれがどんなものかはなんとなく捉えられるし、自分の国で当てはめることが出来るのではないだろうか。これって今作が世界的な評価を得たことが証明してる。気がする。

私が今作で最も強烈に、印象的に、衝撃を受けたのは松岡茉優の演技だ。『ちはやふる 下の句』でも彼女の演技にはかなり衝撃と感動を受けたのだけど今回はそれをゆうに超えてきた。太ももの震えが止まらなかった。彼女演じる亜紀って今作の人物の中で1番難しい役どころじゃなかろうか。それもあまり多くを語られないあえて詳しく描かかれてない。それをあの演技…。いや凄い。色んな方の感想をTwitterなどで見てると松岡茉優の演技についてあまり書かれてなかった。エロいとかばっかり。いやそれも含めての演技なんだけどね。でも私の中ではそのエロいとかを超えた衝撃を感じた。目とか顔とかおっぱいとか手とかパーツじゃなくて全部。全身全霊ってああいうことを言うんだろう。安藤サクラも凄かった。リリー・フランキーも凄かった。樹木希林も凄かった。子役も皆んな凄かった。短いながらも確実に仕事をした池松壮亮も凄かった。なんだよ、このキャスティング。完璧じゃん。

あまりにも生々しく描かれる。そしてやはり今の日本の現状なのだ。臭いものには蓋をする。その精神は世界各地の共通でもあるだろう。相変わらず保守的で政治を語る事をタブーとする考えの根深い日本では予想通りの反応が出ている。政治を学ぶものとしていい加減見飽きてきた反応だ。受賞後すぐに反応しない政府にフランスの新聞から批判される始末…。公権力からは距離を置くべきという至極真っ当な監督の考えに冷笑をし、助成金をこっそり貰ってたと騒ぎ…。騒いでる奴はエンドロール最後まで見てない馬鹿だろうし。この映画を見て、日本人が皆 万引きをする人種なんだという捉え方をする馬鹿は日本にしかいないよ。どうせ履き違えた愛国心を振りかざす馬鹿がしっかり見もせず言ってるだろうし。

"家族"の定義を考えさせる。

"誰か他に捨てた人がいるんじゃないですか"
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