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万引き家族のnnmのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます


壮絶……いろんな問題が重なり合いすぎ、「普通じゃない」……そんな家族だけど、実はそう遠い存在ではないのかもしれない。虐待、貧困、ジェンダー、もしかしたら殺人までも、目に入らないだけでわたしたちのすぐ隣にある問題なのかもしれないし、それらは別個に存在しているわけではなく重なり合ったり複合したりして社会に蔓延っているんじゃないかしら。あの6人は家族じゃなかったのであろうか。血が繋がっていないし、本当の名前も知らないで、お互いが結局自分のことしか考えていない、それだけだったのか。夫婦は殺人犯で誘拐犯。おばあちゃんはお金が欲しかっただけ。自分の身が危うくなったら家族を捨てて逃げるなんてほんとうの家族じゃない?なんかそんな安直に捉えていいのかなあと考えさせられる映画だった。夫婦やおばあちゃんの事実はショッキングで裏切りと言って間違いないだろうし家族がやってきたことを仕方ないと許容することは決してできないとおもうけど、彼らはそうせざるを得なかった、環境がそうさせた面も少なからずあるとおもうしそこを無視してはならない。家族の情緒的つながりも決して嘘ではない。彼らのどの一面もすべて彼らなのだ。見捨てたからって愛してないわけじゃない。お金目当てなのも愛していたのも事実。人間ってほんとうはそうなんじゃないか。揺るがないひとつのアイデンティティがあるわけではなくて、状況的、気質的要因から無数の自分になりうる。でもそのすべてが自分であって嘘ってわけじゃない。そういう人間同士が関わるから物事もまっすぐ良い方向にいくとは限らなくて屈折する。これってかなりリアルなのでは?「普通じゃない」を通してリアルをみる。「普通」に生きていたら単純化して考えてしまいがちだから。あ~~いい映画でした。わたしはすきだ。最後に印象に残った台詞。「捨てたんじゃないです。拾ったんです。誰かが捨てたものを拾ったんです。」社会から疎外されて周縁化された人々だからこそ言える。彼らはずっと拾って生きてきた。
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