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ラジオ・コバニのhorikingのレビュー・感想・評価

ラジオ・コバニ(2016年製作の映画)
5.0
先週の「ラッカは静かに虐殺されている」に続いて、この週末もシリアを舞台にした映画を観た。トルコとの国境沿いの街コバニがIS(過激派組織イスラミックステート)の制圧から解放された直後のドキュメンタリー映画だ。コバニでFMラジオを始めた大学生の女性を語り部に映画は進行する。米軍によるIS攻撃の空爆で廃墟と化した街。瓦礫を撤去するブルドーザー。次々に掘り起こされるISの戦闘員の死体を片付ける作業員。その様子をじっと見つめる子どもたち…。ショッキングな映像が次から次へと映し出される。ラジオ・コバニは街の出来事や復興のニュース、ISとの戦闘状況を伝える一方、音楽が重要な役割を果たしている。街のあちこちで、携帯ラジオに耳を傾ける人々がいる。ここでもラジオが傷ついた人の心に寄り添っていたようだ。語り部の女性のモノローグは、未来のわが子に伝えるという設定で語られる。“戦争には勝者も敗者もない。みな敗者だ” 万感のこもった言葉が、圧倒的な説得力で迫ってくる。ぜひ、観てほしい映画である。
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