TAK44マグナム

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

4.8
We love Hollywood


いや〜、楽しい時間でした!
ありがとう、タランティーノ!
さすが、自分の好きなもので御伽話を語らせたら世界一ですよ。

そう、タランティーノ作品は、みーんなタランティーノが好きなものをつめこんだ御伽話。
今回舞台となるのは1969年のハリウッド。
アメリカが混沌としていた時代です。

主人公はレオナルド・デュカプリオ演じる落ち目の俳優リック・ダルトン。
そして、リックの専用スタントマン兼運転手その他諸々をこなす相棒、クリフ・ブース。
演じるのはブラッド・ピット。
ハリウッドきってのスター俳優が初共演。
更に、実在した女優シャロン・テートも、マーゴット・ロビーが演じて登場します。
彼女は2人とほぼ絡みはありませんが重要なキャラクターでして、何故ならクライマックスとなるシークエンスが、カルトによってシャロン・テートが殺害された実際の事件をモチーフとしているからです。
なので、最低でもシャロン・テートがマンソンファミリーに惨殺された事件の概要ぐらいは知っておかないとラスト付近でよく分からなくなってしまいますのでお気をつけください。

・・・と、ここまで書いて気づきました。
他の方のレビューでもテンプレートの如く書いてあることだと。
でも、そこでまたはたと気づきましたよ。
何を書いて良いのか分からない、と。
言葉が思い浮かばないのです。
ただただ、ひたすら楽しい鑑賞体験だったな、ということ以外に感想らしい感想が思い浮かびません。

無理やりに捻り出しても、タランティーノ独特の、エピソードの積み重ねやしゃれたセリフの応酬が本作でも最高だったとか、いつにも増して全ての登場人物が愛おしくて魅力に溢れているなど、そんな語彙力皆無な感想しか書けないのです。

こんな駄文に時間を割くなら、洋画好きなら観て欲しい。
なんだかホッコリするハッピーなお話に酔いしれて欲しい。
「リック・ダルトン様だぞ」と、役者としてのアイデンティティを危うくも保つ涙目の表情が素晴らしいデュカプリオを、車を転がしていても、犬の散歩をしていても、アンテナの修理をする前にタバコを吸う仕草でさえも全てのカットで格好いいブラッド・ピットを、自分が出演している映画を劇場で観てご満悦なマーゴット・ロビーを、つまりは最高の演技を魅せてくれる様を目に焼き付けて欲しいのです。
本当に巧いから。
デュカプリオ演じるダルトンが子役の前で苦しい本音を吐露する場面なんて感銘を受けないはずが無い(また、子役が超絶巧い)!

もうね、面影が全然無いダコタ・ファニングや、喚き散らすイーライ・ロスの奥さん、いかにもいそうなプロデューサーのアル・パチーノ、どっこい生きてたブルース・ダーン、遺作となってしまったルーク・ペリー、優男全開のエミール・ハーシュ、スタントマン役なら俺だろのカート・ラッセル、ヤンチャおばさんのゾーイ・ベルなどなど・・・実に多彩な顔ぶれが揃っていて、次から次へと出てくるのでそれだけでも飽きません。
実在の人物も混ざっているのですが、スティーブ・マックィーンは本人かと思うほどダミアン・ルイスは似せてきていましたよ。
口調も似ているんじゃないでしょうか。
対して、ブルース・リーはサングラス外すと全然似ていませんでした(苦笑)
でも、ブラッド・ピットvsブルース・リーが見られるのは多分本作だけ!
それだけでも五億点でしょう!(笑)

かように、当時のハリウッド事情を知っているほうがより楽しめることは間違いありませんが、半分もネタが分からなくても充分に楽しめたので、「リーがカトーと呼ばれているのは「グリーンホーネット」の役名だから」や「シャロン・テートの元カレがマックィーンのヘアスタイリストだった」ぐらいの知識があれば何も困らないと思います。
あとは前述した通り、シャロン・テート殺害事件と、ヒッピームーブメントが生み出したカルト集団であるマンソン・ファミリーについて少々知っているなら準備はOK。
因みに、チャールズ・マンソンって男は元祖・麻原彰晃みたいなヤツ。
既に獄中死していますけれど、今尚カルチャーや思想に影響を与え続けているのが恐ろしい(本当のところ、ただの大ボラ吹きなのがヒッピームーヴメントがカリスマ化させてしまった)。


一挙にファンタジーに突入するラスト13分ですが、タランティーノ流ヴァイオレンスに慣れていないとキツいかもしれません。
冗談で人を殺すのがタランティーノ流なので(汗)。
少しやり過ぎに感じるかもしれませんが、シャロン・テートはあの100倍は酷いことをされたわけで、まだまだ抑えた方なんじゃないですかね。
それにしても、突拍子もないリック・ダルトンの行動には劇場でも激しい笑いが沸き起こりましたよ。
もう、腹抱えて笑いました(笑)。
「マジかよ!それ使うのかよ!」って。

そして、事件が収束したあとの余韻。
開いた門は、新しい未来が開けた象徴なのでしょうね。
なんとも言えない多幸感にドップリと包まれながら、エンドロールを迎えることができました。


うひー、面白かった!
けれど、世代や何やらでウケない層もいらっしゃるでしょう。
タランティーノ作品のクセの強さに慣れていないと、単なる散漫なホラ話としか映らないかも(汗)
もしかしたら、予習としてタランティーノ作品をいくつ観て慣れておいた方が無難かもしれませんね。

少なくともタランティーノ好きならマスト!
レオナルド・デュカプリオ好きでもマスト!
ブラッド・ピットやマーゴット・ロビー好きなら尚更マスト!
生脚や足の裏フェチの方、そして男の友情フェチな方にも手放しでオススメさせて頂きます!


劇場(TOHOシネマズ海老名)にて