にしやん

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのにしやんのレビュー・感想・評価

4.1
タランティーノ監督の9作目や。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの二大スターが初共演でも話題やな。舞台は1969年のハリウッドや。架空の落ち目のテレビ俳優とそのスタントマンとの友情と、それと実在の著名な映画監督とともにハリウッドへやってきた新進女優の悲劇を軸に、黄金時代と呼ばれたハリウッドの光と影を、タランティーノ流に描いた作品や。

作品が終わったとき、エンドロールを観ながらなんか泣けてきたわ。まさかタランティーノ観て泣くとは思わんかったわ。これまでタランティーノは全部観たけど、泣けてきたんは初めてちゃうかな。多分タランティーノの長編9作品全部を観た人は泣けてくるんちゃう?逆に、タランティーノ監督作品を観たことない人は、なんで泣くんかさっぱり意味分からんやろし、この作品のどこがおもろいんかすら分からんやろな。

本作は1969年のハリウッドが舞台で、当時の時代背景やら映画ネタやらのおもちゃ箱をひっくり返したみたいに散らばってわ。登場人物が関わる映画とか、セリフに出てくる作品とか、背景のポスターに至るまで、ありとあらゆる映画ネタが凝縮してる。これだけでも映画オタクには堪らんわ。たぶんこの監督の頭の中は映画のことしかないんやろな。まあ、それをようここまで映像にしょったなあと、このオッサンにあらためて感心したわ。

それと、今回もやってくれてんな。タランティーノお得意の映画で史実を変えてまうとこ。これこそ彼の真骨頂や。「イングロリアス・バスターズ」や「ジャンゴ 繋がれざる者」でもおなじみの。わしの気に入らん歴史はわしが変えたるを今回もやっとんな。ラストかて、望むと望まずともハリウッドの激変に翻弄された3人を映画の力で救っとる。この優しさと幸せに満ち溢れてた救いは、タランティーノ史上トップクラスとちゃうかな。

「キル・ビル」の時みたいに、映画オタクの過剰な自己満足作品として批判の批判は当然あるんかもしれんけど、ただの映画オタクの自己満足作品やなしに、タランティーノ子供の頃から胸に思い描いてきた夢を現実した作品やろな。タランティーノは監督作品を10本撮ったら引退する言うてんねやろ。もしそれが本当やとしたら、本作は最後から2番目の作品や。監督業でキャリアこんだけ積んできて、もう50代になってねんからそれくらいしてもええんとちゃうかな。最後から2番目の作品やということを強烈に意識した作品やな。

ここまでは、どっちか言うたらタランティーノフリークのわしの感想や。ただのディカプリオやブラピのファンとか、1969年当時のハリウッドに全く興味あれへん人にとったら、ただただだらだら長く感じるだけの退屈な映画かもしれんな。ディカプリオとブラピという二大スター使ってんねんけど、絡みのシーンは少ないし、二人の共演自体のおもろさは微妙な感じやし、完全なバディムービーとは言い切れんし。映画の魅せ場はそれぞれ単独のシーンばっかりやもんな。多分二人が大スターすぎて、スケジュールが合わへんかったんやろか。

それと、「チャールズ・マンソン」「シャロン・テート殺害事件」のことを全く知らへんと観たら訳分からんやろ。それに、あんまり大事やないシーンをダラダラと見るタイプの映画が好きな人はええかもしれんけど、なんかはっきりとしたメリハリのあるストーリーの映画が好きやという人には辛いかもな。ディカプリオやブラピの二大スターのお陰やろ、普段映画館には来うへん若いカップルがようけ来てたけど、観た後どんな会話すんのやろな。果たして映画の話題すんのやろか。そういう人等には結構きついんとちゃう?
にしやん

にしやん