Inagaquilala

男と女、モントーク岬でのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

男と女、モントーク岬で(2017年製作の映画)
4.0
ニューヨークとロングアイランドが舞台であるのに、監督のフォルカー・シュレンドルフはドイツ、主人公を演じるステラン・スカルスガルドはスゥエーデン、ヒロイン役のニーナ・ホスもドイツ、しかも製作国はドイツ、フランス、アイルランドと、当然、通常のアメリカンメイドとは異なるテイストのラブストーリーが展開する。新作の小説のプロモーションのため、ニューヨークを訪れたドイツ人の作家マックス。17年前に別れたかつての恋人レベッカと再会する。レベッカは東ドイツの出身。マックスとの間にどんな事情があったのかはわからないが、いまはニューヨークで弁護士として働いている。

ふたりを結びつけるのは、謎の資産家。彼の元でマックスとレベッカは出会い、愛を交わす仲に。このあたりの過去の事情は靄に包まれているかのように明らかにされない。モントークは、ニューヨークから2時間余り、ロングアイランドの突端に位置する場所だ。そこで、ひさしぶりに再会したかつての恋人が、失われた日々を語るのだが。果たして、ふたりの思いは再び寄り添うのか。マックスにはニューヨークに恋人もいて、彼女とレベッカの間で心と体は揺れ動く。ある意味、とてもベタなラブストーリーなのだが、ニューヨークという街の表情と季節外れのロングアイランドの風景が、ふたりの恋情に妙味を添加する。

「ブリキの太鼓」で知られるドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフが、御年79歳でどうしてもつくりたかったという作品。冒頭は、主人公である作家マックスの意味深な朗読から始まるが、これはそのままフォルカー・シュレンドルフ監督の独白のようにも感じる。レベッカ役のニーナ・ホスが、過去を背負った移民の女性弁護士を、ニュアンスたっぷりに演じている。アメリカを舞台にしながらも、作品はヨーロッパの作品のように、事情ある男女の心の襞に分け入って行く。それにしても、ふたりが過去を回想するオフシーズンのモントーク、思わず出かけてみたくなる。
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