MasaichiYaguchi

ヒトラーを欺いた黄色い星のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年製作の映画)
3.6
この映画を観るまで、1943年6月19日のナチス宣伝相ヨーゼフ・ゲッペルスの「ベルリンからユダヤ人を一掃した」宣言を〝鵜呑み〟にした歴史認識を持っていて、大戦下のベルリン各地に7000人ものユダヤ人が潜伏し、そのうち約1500人が生き延びたということを知らなかった。
ドキュメンタリーを中心に制作してきたクラウス・レーフレ監督による本作は、4人の生存者の証言を元にドキュメンタリータッチで再現ドラマが展開する。
「事実は小説より奇なり」と言われるが、死と隣り合わせの過酷な日々を生き延びた彼らの歩みは正に〝ドラマ〟以外の何物でもない。
この4人の若者たち、ツィオマ・シェーンハウスは偽造身分証作りで、ルート・アルントはドイツ軍将校のメイドになることで、オイゲン・フリーデはナチスへの抵抗運動しながら、そしてハンニ・レヴィは髪を金髪に染めて別人になってとサバイバルの方法は様々だが、運否天賦に委ねず、自分の才覚やコネを使って危機を凌いでいく。
そして最後の方の証言で強調されていたが、苛烈な状況下にある彼らに〝蜘蛛の糸〟を垂らした人々がいたということ。
それは同胞だけでなく、彼らを苦めたドイツ人の中にも救いの手を差し伸べた人々がいたという事実。
この作品を観ると、如何に平和が尊いかということと、狂気や恐怖が支配する戦火の中でも人間性や善意が確かにあったということが、希望として心に残ります。