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焼肉ドラゴンのtoshiのレビュー・感想・評価

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
4.8
良作の邦画をまた堪能できました。個人的には万引き家族より良かったです。
高度成長期の中、関西のとある一角にある国有地。そこに不法に住居を建て焼肉ドラゴンというホルモン焼き屋を営む金家族。そのホルモン焼き屋で、笑いあり泣きありが繰り広げられる今作。内容としては普通かもしれません。でも私はこの家族と取り巻く仲間たちのドラマをとっても素晴らしく感じました。

各キャラを担当した俳優さん達が絶妙にこなしている中、ピカイチだったのが店主金龍吉を演じたキム・サンホさんと龍吉の妻を演じた金英順演じたイ・ジョンウンさん。お父さんとお母さんを演じたこのお二方が特に素晴らしかったです。更に言えばイ・ジョンウンさん演じる母親が兎に角優しかった。ヒステリックですぐ怒鳴ったりしますが、自分と龍吉の間に生まれた本当の子供だけではなく、龍吉と前妻の間に生まれた子供達にも途に角優しい。そして暖かい。我々が子供の頃に感じた母親の暖かさを、英順を観ていてとてもリアルに感じました。昭和のあの時代の母親ってみんなこんな感じだったと思います。
真木よう子さんが舞台挨拶か何かのインタビューで、イ・ジョンウンさんととても仲良くなり本当の母親の様に甘えたと言っていましたが、今作を観てその気持ちが良くわかりました。

何気ない場面の繰り返し(それでも観ていて飽きることはありません)と思いきやこの家族に衝撃の出来事が起こります。そして国有地である為役所からの立ち退きをしつこく迫られますが、その時これまで寡黙に働き続けてきた龍吉が、初めて自分の感情をあらわにし発した言葉は観ていて胸を締め付けられました。

ラストも本当に感動させられました。ラストの龍吉、英順夫婦が兎に角切ない。切ないけどでも大ラスはちゃめっけがあったり・・・。最後まで心を暖めてくれるなぁと思っていたら、龍吉の最後の言葉というか叫び・・・。これからもくじけないで、そして負けないで元気に生きていって欲しいと願いました。

【余談1】
キム・サンホさんはチャン・グンソクさんと共演した楽しき人生でも良い演技をされておりましたが、今回はその何倍も素晴らしかったです。因みに今作共演した大泉洋さんとは2歳しか違わないのに、今作では義理の父親役・・・。凄い貫録です。
【余談2】
女性陣はイ・ジョンウンさんだけではなく真木よう子さん、井上真央さん、桜庭ななみさんといった娘を演じた方達もみんな素晴らしかったです。中でも桜庭さんがとても頑張っている印象を受けました。
【余談3】
今作は昭和44年が舞台となります。1969年・・・。私が生まれた年です。因みに私も関西の生まれです。兵庫は姫路で生まれました。お城のそばにある国立病院で生まれたのですが、お城の近くという事もあり家の周りは今作の様な酷い建物が並ぶ感じではなく閑静な街並みでした。あの頃こんな生活をしていた人達が近くに住んでいたのかとちょっと考えてしまいました。
【余談4】
ちょいちょい面白いシーンが盛り込まれています。しんみりしたシーンでもちょっとした小ネタみたいなものを入れてきて、そんな見せ方を個人的には凄く新鮮に感じました。
【余談5】
ご返盃のシーンが・・・。長いw 真木よう子さんは何か途中笑っていた様な・・・。
そして亀の子たわしが面白いっ!!最後まで面白いっ!!

女性はやっぱり駄目な男の方が好きになってしまうんでしょうね。どうしてもほっとけないと言いますか・・・。亀の子たわしは優し過ぎました。
優しい人とよく言われる男性の方・・・。優しい男はモテませんw
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