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ゴッズ・オウン・カントリーのkのレビュー・感想・評価

5.0
神に与えられた地とも言われているヨークシャー。
"は?神が何だよ"と悪態をつきそうな主人公・ジョニーは、自然の恵みに感謝する余裕などなく、理不尽な孤独から逃れるように酒とセックスで日々をやり過ごす。

私も田舎者だから少しわかる。
ここにはなんにもない、と悟ってしまえば全てが無価値。自分はつまらない人間だと認めてしまえば楽になるのに、何かが邪魔をする。
やり場のない苛立ち、不安、受け止めてくれる人も物も、見つからない。

いつの間にか木々のささやきも聞こえない。人間も牛も大差ない。

でもジョニーはたった1人、出逢えた。

見飽きたはずの景色は、ほんの一部でしかなかった。
知り尽くしたはずの動物たちは、諦めなければ息を吹き返す。

世界を教えてくれる人に、出逢えた。
まるで神が与えてくれたような、奇跡の人。

暮らしの温度が伝わる作品だった。
風の音が良い映画に悪い映画はない。
監督がシーンによって風の音も編集しているらしい。

男同士の愛を描くことにとことんこだわられた作品。
ラブシーンは、セクシーなゲオルゲにうっとり。ドキドキせずにいられない。
野性的で少年のようなジョニー、最後は彼なりに成長出来て、みてるだけで幸せな気持ちになったな。

社会問題も現実的に感じられるし、牧場の仕事も俳優本人がこなしてて、その全ても恋愛に大きく関わることを理解した真摯な姿勢が、数々の映画賞を受賞した要因のひとつかしら、と思ったなぁ。ほんと良かった。
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