にしやん

パドマーワト 女神の誕生のにしやんのレビュー・感想・評価

パドマーワト 女神の誕生(2018年製作の映画)
3.0
絶世の美女の王妃をめぐって起こった戦争の話や。13世紀末から14世紀にかけてのインドの史実をベースに16世紀頃にイスラムの詩人が書いた物語が原作らしい。つまり歴史をベースにはしてるけど話としてはフィクションのようや。スリランカの姫で絶世の美女を嫁はんにした北西インドのラージプート族の王さんと王妃に横取りしようとして戦争をしかけるイスラム系王朝の王さんとの壮絶な戦いがストーリーになってる。インドではこの話は誰でも知ってるみたいやな。日本でいうたら源平の合戦とか忠臣蔵とかそういうレベルなんやろか。
インド人のヒンドゥー教徒にとってパドマーワティっちゅうたら見た目もものごっつい美人やけど心も清く美しい妻の鑑として理想の女性やし、イスラムと最期まで戦ったヒンドゥー教徒の鑑とみなされてるらしいわ。パドマーワティは単に文学作品の中に登場する王妃ということにはとどまらへんものすごい尊い、究極に美化された存在なんやろな。
この映画には「サティー」っちゅうヒンドゥー教徒の古い風習が大きく関係してんねん。夫を先に亡くしたら妻も焼身自殺せなあかんっちゅうやつや。「サティー」で死んだ女性は死んだ後女神として崇められるらしいわ。映画の冒頭に「サティーを推奨するものではない」みたいなアナウンスが入ってたけど、もちろん今は禁止や。その他に重要なキーワードとして「尊厳殉死(=ジョウハル)」っていうんが出て来てたけど、戦いに負けたラージプート族の女性たちの集団自殺のことや。敵の戦利品になるくらいなら皆で死のうっちゅうことやな。この作品も決してジョウハルという行為を崇めてるということはないみたいや。
「サティー」にしたかて「ジョウハル」にしたかて、「推奨してへん」って最初に言い訳みたいなこと言うてるけど、映画最後まで観て感じたんはやっぱり美化してるんとちゃうの?ってことやわ。あんまり言うとネタバレなるさかいこれ以上は言わへんけど、この作品観た人でわしみたいに感じた人も多いんとちゃうかな?これだけ戦争での性暴力の問題が国際問題としてクローズアップされてる時期にこういう映画を世に出すっちゅうはどういうメッセージなんやろな?
それとこの映画、インド国内ではヒンドゥーの王妃とイスラムの王との不倫を描いてるっていうデマが撮影中に広がったみたいで、上映禁止を求める暴動とかが各地で頻発して上映が1年近く遅れるといういわく付きの作品になってしもたみたいやな。映画観た限りでは不倫とか全くあれへんし、この内容でなんでそんな皆怒ったりしたんやろ?と思たわ。ひょっとして騒ぎを見て内容変えたんかな?インドでのヒンドゥーとイスラムの問題は相当根深そうやな。
映画の中身のほうやけど、ストーリーいたって単純。人物の内面の掘り下げもそれほどでもなく。踊りも少ないし。中盤の殿下奪還作戦はちょっと盛り上がったけど、映像美だけで3時間近くは正直しんどい。
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