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父、帰るのharuのネタバレレビュー・内容・結末

父、帰る(2003年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

12年ぶりに帰ってきた父と、突然現れた「父」に戸惑う息子たち。彼らは旅を通じて空白の12年を埋め…られるわけねぇわ。

主人公イワンは父親のことなど何一つ覚えていない。むしろ一家における「父親」という存在すらよくわかっていない。兄のアンドレイも似たようなもので、とりあえず「父親」を受け入れたのは、頼れる男親への憧れのようなものからだと思う。そんな兄弟と父親が2、3日共に過ごしたくらいで親子になれるはずがない。ということでまぁパパは気長にがんばりますよみたいな話かと思いきや!私のハートはこれっぽっちも温まりませんでした。

一家に何の前触れもなく突然出現した父の正体は一切明かされることはない。なぜ出ていったのか、12年間何をしていたのか、旅先での怪しげな行動も含めてとにかくすべてが不明である。調べたところによると、この作品は親子愛を描いたものではなく、宗教的な意味を含んだ兄弟の成長物語らしい。つまり父の正体は万物の父である神であり、それまで不在であった「父」の役目を一家に知らしめにきたのだ。
確かにこの父、自ら息子たちに「旅に出ようぜ!」とか言いながら、彼らに歩み寄ろうという気持ちがさっぱり見えない。威圧的で時には殴って言うことを聞かせることもある。「いきなり出てきて父親ヅラすんじゃねーぞ!」と絶賛反抗期中の弟がナイフを振りかざすのも納得。兄貴は鼻血出しながら「ひどいよ、パパ~」って泣いてるし、父というより鬼軍曹です。(無人島でサバイバル始めたときなんか「命の保証はしねぇぜ」とかドヤ顔で言われたらどうしようとか余計な心配しちゃった)
そんな軍曹の退場は実にあっけない。このシーンは心臓が止まるくらい、びっくりしました。普通こーゆーとこってスローモーションとかCM明けで繰り返しとかしそうなもんだけど、ほんとに一瞬です。しかしこの一瞬のシーンの前後で兄弟の顔つきがガラリと変わる。特に兄貴はさっきまで「パパ~」とか鼻たらしてた子供ではない。彼らはすっかり「大人」になっていた。

神は息子たちに教えにきた。そして6日間で彼らの世界を作った。
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