やすやす

あの日のオルガンのやすやすのレビュー・感想・評価

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
4.5
劇場で観たかった作品でしたが地元で上映の
機会が無くてレンタルでようやく鑑賞出来ま
した。
戦時下で疎開した保母さんと子ども達の物語。
あまりの切なさに幾度も幾度も涙を流しまし
た。やはり劇場で感動を体感したかった作品
でした。

武器を手にして戦場に赴くだけが戦争ではな
い。空襲を避けるために親と離れ離れになら
ざるを得ない子ども達と寝食を共にして必死
に見守った若き女性たち。彼女たちも苦難の
戦争を戦った立派な戦士だと思う。
平時でさえ苦労を伴う幼い子どもたちの世話。
ましてや戦時下の非常時で衣食住もままなら
ず親代わりに付きっきりでケアをしなければ
ならない。どれだけの心労がのしかかるのか
想像を絶するものがある。自分の事だけでせ
いいっぱいで逃げ出したくなる人もいるだろ
う。自身が生んだ訳でもない子どもたちをな
ぜ自らが盾となるように守ろうとするのか。
それは保育士としての使命感に他ならない。
自分に課せられた天命だと信じた者もいるだ
ろう。幼き命を人として見過ごす事が出来な
い思いもあっただろう。
そして、彼女たちも子どもたちに一方的に愛
を注いでいた訳ではない。子どもたちの笑顔、
愛らしさから生きる活力を得ていたに違いあ
りません。苦しい毎日を共に戦った戦友でも
あったはずです。彼女たちも子どもたちと接
することで保育士としても人としても大きな
成長を遂げたのでしょう。

作品のタイトルからはオルガンが保母と子ど
もたちの心の支えになった様な印象ですが作
中ではそれほどの比重は置かれてはいません。
実際、それほど甘い状況では無かったと思う。
ただ生きることに精いっぱいの時代に保母た
ちにとってオルガンは教育を施す保育園の役
割は忘れたくないという気持ちの象徴なのか
もしれないと感じました。

戦中における知られざる実話に接して今の世
相と照らし合わせて考えざるを得ません。あ
の時代はもっともっと苦しかったのだと思う。
やすやす

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