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東京彗星のjonajonaのレビュー・感想・評価

東京彗星(2017年製作の映画)
4.2
高円寺の監督登壇座談会付きの上映会にて。会場がただの雑居ビルのワンフロアという感じの場所で、初めて見るくらいの小さなミニシアターでなんかわくわくした。
カメレオンのお化けがいてびっくり。

30分の短編で正直存じ上げなかったけどいざ見ると冒頭の隕石が一年後落ちてくるというSF設定のの見込ませ方、情報の見せ方が非常にスムーズでなおかつテンポの上げ感もカッコよくてタイトルロゴまでの流れで一気に引き込まれた。
東京彗星、のロゴかっこいい。

座談会で監督がCM畑出身だと話しててなんとなく納得のいく、絵面?構図のパキッとしたカッコ良さを全編感じましたね。
東京に隕石の落下が予想されて、地下がガタ落ちしてタワマンに逆転現象が起きてたり(金のない厭世家の若者がタワマンに住んでスカイツリーが見えるんです!とはしゃぐ嫌〜なリアリティ…笑)逃げ出さず意外と働いてる人がいたり、疎開する人がいたり、人生諦めて隕石落下を見届けようとする人がいたりする退廃感が見事で、
物語内のリアリティの作り込みに何も映像的な魅力だけ作ればいい訳じゃないんだなーと勉強になる。

『死にたくないけど、
生きたいわけでもない』
っていう感覚が一つテーマになってて、
すごくこの言葉には共感できた。

ニュース情報とかその状況でこういう生活してる人いそう…!っていう生感のある情報がリアルで心の距離がグッと縮まったし魅力的でした。

震災に対する気持ちが物語のベースになってるあたりも、テーマ性がわかりやすく伝わってきて良かった。
フィルマの画像になってるニュース映像の『にげて!』の文字は震災時に実際流れてた番組テロップを引用したものらしく、他にも作中のニューステロップは震災時の実物を地名など加工してつくるなどしてリアリティへの拘りが強く、それが緊張感を高めてる。

鬱屈した兄と、まだ純粋で兄想いの弟っていう主人公たちの関係性もよかった。
弟を拾ってくれるオジサンのキャラも最高。兄貴と風呂入るシーンの喝の入れ方がこれしか無い!という方法だったのが気持ちいい。

短編でなくて長編でもっと中を膨らましてみしてもらいたいくらい好きでした。
監督の話も自分には刺激的で、会場の雰囲気も相まって貴重な経験をさしてもらった。

監督が製作費の話をしてたんだけど、短編という名前からは想像できない額を口にしていて(かなりかかった方とは仰ってたけど…)映画ってすごいなぁ…と思った。
貯金はほぼ使い切るだけ金を使ったらしく、大変なんだろうなーと。
その時の監督の、膨大な製作費に萎縮して規模を縮小したりするより、沢山金を掛けて撮りたい題材を撮ろうと目指せた当時の自分の姿勢を評価した言葉『そっちに賭けれる人間でよかった』ってのがなんか印象的でした…
そこまでして見せたい思いが映画には詰まってるんだろうなーとか考えさせられた。
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