jonajona

ヘレディタリー/継承のjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

久々にホラー見て心底怖かった。

人気出たタイミングでもあまり情報を入れなかったので、ほとんど素面で鑑賞できてよかった。

静寂からの一瞬の動作。アリアシター監督の素晴らしい所は驚かしの動の部分ではなくて、静の暗闇に恐怖を与える技術がずば抜けてる所でしょうかね。
半分くらいはベタっちゃベタな事しかしてないのに映画全体のルックとしてなぜこれ程新鮮な雰囲気になるのか…
はじめ30分くらいは割とふーんて感じでしたが、それから鶴瓶落としに面白くなりました。娘さんが死ぬ所嫌すぎて『あぁっ!!』って声あげた…

母親になること、この社会で母親であり続けなければいけないことの恐怖、女性版シャイニングですね。

そういや、冒頭とエンディングがお母さんが作ってたミニチュアハウスの様な造形に着地していたんですが、コレも深読みすると代々受け継いだ精神疾患の結果、心を病んだ母が息子や夫達を殺してしまい、その結果精神病院で『箱庭療法』を試みている…という風にも解釈できます。

なんなら、後半で急にエンタメに振り切って悪魔祓い(悪魔対『真実』を知ったお母さん)という構図になりますが、それよりそこまでの主人公の人物造形からすると『母親が狂って過去の殺人を悪魔のせいにしようとしてる』方が理屈的にはしっくりくるんですよね。
娘は忙しいから(あるいは育児を祖母に任せてた後ろめたさから)兄に押し付けて、兄が彼女を事故死させてしまったら完全にその責任は兄にあると激昂してしまう人物なんですから…!
(それも表裏で、子供の失態は果たして母親の責任であるのか?という懐疑点が新しく浮上しますが…)
悪魔が本物…より、悪魔を本物という事にしたい母親の病的な悪夢の中に迷い込んだ…という方が正解かも。
アリアスターさんはテーマに『女性』を置く人だけど、決して『女性の味方』という生優しい立場を取らないんすね…
かなり手厳しい目線を感じる。
女性・母性の全能感子供に対する支配心などのバランスの危うさについての視点があり、
加えて『ミッドサマー』にも通じる部分ですが『治療』というものについても『治すべきものなのか?』『向き合うべきものなのか?』という問いを投げてる様な気がする。
あのラストが治療で映画全般が妄想なんだとしたら…主人公(お母さん)の心は果たして快方へと向かってるんでしょうか
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