図師雪鷹

ヘレディタリー/継承の図師雪鷹のレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
5.0
何にもない暗闇がものすごく恐ろしい。
この映画は、そんな誰しも持つ根底的な恐怖心に迫ってきた作品だった。

これは、死んだ祖母からとある"何か"を受け継いでしまった家族の崩壊を描いたホラー映画だ。単なる化け物が出てきてワァー!!という映画ではなく登場人物に深みが出ていていい。町山さんによると、監督は中流家庭の崩壊を描いた映画『普通の人々』を参考にしたとのことだが、かなり似ているところが多かった。特に母親と息子の関係の描写。母親と息子がいがみ合っているシーンで、普通の人々のシーンが頭に浮かび上がるほどだった。

この映画はかなり多くの伏線があるが、これから見る人は、母親と息子の関係に一番注目してほしい。この作品を一番盛り上げているのは個人的にこの要素だと思う。
母親を演じているトニコレットは本当に凄まじい。自分のトニコレットのイメージは完全に『リトルミスサンシャイン』なのに…。演じている役柄は同じ"母親"だが、違いすぎる笑笑
全体的に絶叫、顔芸…ホラー映画に不可欠な要素は完璧だったが、一番やばかったのはあそこ…。3人がろうそくの前に立ったロングショット、トニコレットの表情が一瞬で闇に包まれてから水をかけられるまでのあのシーン。正直、身震いした。

全体的に見直すと、途中まで焦らされていた感はあったが、逆にそれが良かった。後半、ストーリーはとんでもないスピードで駆け抜けていって、自分の中に溜まっていた何かが発散されたような気持ちになったからだ。最後、正直頭は混乱したが、ホラー映画にしてはあまりにも格調高いシーンのおかげで、純粋な恐怖を得ることができた。



評価が高いのもうなづける。
図師雪鷹

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