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アンセイン ~狂気の真実~のSY3KRのレビュー・感想・評価

2.5
巨匠スティーブン・ソダーバーグ監督が新たなジャンル開拓の片鱗を見せた、B級サスペンス・ホラー。

ソダーバーグ監督と言えばド派手で分かりやすく金のかかっている演出が特徴だが、本作は全く逆のイメージでむしろ安っぽい。全体から滲み出るB級感は拭えず、これまでの作品が好きな人ほど落差に驚くだろう。低予算映画に見えてしまう一因は、全編iPhoneでこの映画を撮影するという手法にある。

これによって犯罪者が人間を盗撮する様子が生々しく再現され、変質者の異常性がじわじわと画面越しに伝わってくるため、臨場感は確かに増した。しかし同じ手法はあらゆる映画で用いられていて今更感は強いし、第三者視点の意識しすぎで気が散る場面も多い。あまり上手くいっているとは言い難い。

一方で脚本は、ストーカーの異常性だけではなくケアセンターや精神病院による患者の不当拘留にスポットを当てている点が興味深い。事実、アメリカではこれが社会問題化しており定期的に裁判になるほどだ。実際の事件を調べてみると、ソーヤーが体験する状況と手口がほとんど変わらないことに驚く。彼女の体験は、決してフィクションの世界の出来事ではない。

ただし、ソーヤーが自分を精神病と疑う演出は頻繁に登場するが、デヴィットが施設内に潜入していると分かるのがどう考えても早すぎる。その後は何の裏表もない展開が続き、これでは流石に見ている側も退屈だ。総じて、ソダーバーグのネームバリューで過大評価されている印象は否めない。そこまで褒めちぎる作品ではないだろう。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:80%
・観客支持率 :59%
「スティーヴン・ソダーバーグがB級映画の巨匠にもなれることを明らかにした作品だ。本作はサイコスリラーの不朽の領域に踏み込みつつ、最新鋭の技術を導入した映画作りに挑戦している。」
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