いの

5時から7時までのクレオのいののレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
4.0
夏至の日、17時から19時までのクレオ。『冬の旅』との装いの違いに、この作品は本当にアニエス・ヴェルダなのだろうかと最初のうちは驚いた(アニエス・ヴェルダ監督作品を観るのはまだこれで2作品目)


癌検査の結果を待つ間、いろんなヒトと出会い、会話をし、街を歩いたり家に入ったり。心も当然揺れ動く。美しくてチャーミングなクレア。白が基調の前半のワンピ、室内での中盤のガウン、黒の後半のワンピ。それぞれに意味があったと思う。今、自分で書いていて今作がモノクロだったのかカラーだったのか一瞬わからなくなりました。そうだった、モノクロだった。でも自分のなかで確かに色彩が存在していた!
吉凶などの迷信などを信じようとする前半から、もうそういったことにこだわりたくない後半。


鏡がとても印象的に使われていた。最初のカフェで、画面を2つに割るように配置されている鏡。クレアの部屋の真ん中に位置する鏡。後半、クレアがひとりで入ったカフェ?での柱は、(なんと称して良いのかわからないけど)ミラーボールを表面を剥ぎ取ったような断片のコラージュみたいな柱で反射する。そして、こちらを見つめてくる多くの人の顔。


当時のパリの風景をみるのは新鮮。車のドアの開閉部分にも興味津々。
カフェで人々は実によく(今の自分からみたら驚くほどに)文化や政治の話をしている。1961年、アルジェリア戦争末期。その戦争にまつわる死の気配と、クレオが懸念している癌検査の結果とが呼応しあっている。いっけんお洒落な映画なのに、大道芸人というのか 蛙を何匹も呑み込む男とか、肌に棒を貫通させる人とか、異物のようなものが差し込まれる。そしてそれを物見するヒトたちも。クレアの最後の台詞も、それはその瞬間だけの思いであって、少ししたらその気持ちもまた変化していくのだろうなぁという予感
いの

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