とえ

追想のとえのレビュー・感想・評価

追想(2018年製作の映画)
4.0
ラストで予想外に泣いてしまい、胸が締め付けられるような作品だった

1962年のイギリス
結婚したばかりのフローレンスとエドワードは、ハネムーンを過ごすためにビーチへ行くのだが、2人は初夜から大ゲンカをしてしまう…

若さとは、それだけで魅力的である
しかし、経験が少ない分、不器用でうまく立ち回ることができず、一番大切な人を傷つけてしまうこともある

フローレンスも、エドワードも、とても、真面目で、ピュアな人たちだ

そんな真面目な2人だからこそ、目の前にいる人を失望させたくないと思うし、傷つけてはいけないと思ってしまう

その気持ちばかりが先走り、愛し合う若い夫婦は思わぬできごとから、大ゲンカへと発展してしまう

その2人の関係をこじらせていたのは、フローレンスの両親だったように思う

1960年代、冷戦時代のイギリスは、国民が貧しさを強いられていた時代だった

その中で、フローレンスの父はホワイトカラーの成功者で、
エドワードの家族を「労働者だ」と言って見下し、
フローレンスには異常な愛情を見せる

そのことに対し、母は見て見ぬ振りをし、
そんな両親の存在が、フローレンスを苦しめる
彼女の中では、愛する人と愛情ある家庭を築きたいと、人一倍強く思っていたはずだ

エドワードも、強制的にフローレンスの父の会社に入社させられ
未来の義父から支配されているという立場にあった

庶民的なエドワードからしたら、そんなフローレンスの家族から失望されない夫にならなきゃいけないという気負いがあったに違いない

そんな2人の過度な緊張が、初夜にぶつかってしまう

私がぐっときたのは、その日から後の年月だった

エドワードは、あの時、どうしても理解できなかったことを長い長い年月をかけて理解してしていく

この映画の舞台になっているチェジルビーチは、日本では見かけることのない小石の浜である

海岸の無数の小石は、波に洗われ、互いにこすり合い、角がとれ、丸くなっていく

人間も、その小石たちと一緒だ
お互いに尖っている間は、ぶつかり合って離れてしまう
そこから、長い年月をかけ、角が取れ、丸くなった時に、ようやく、お互いの立場を理解できることもあるのだ

その瞬間、思わずぐっときて、涙があふれてしまった

どちらが悪いとか、そういうことではなく
若いうちには、どうしても理解できないことがあるのだ
大切なことは、ゆっくりと時間をかけて理解し合うことではないかと思う
とえ

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