KUBO

The Crossing -ザ・クロッシング- PartⅡのKUBOのレビュー・感想・評価

4.0
オープニングのナレーションで、後半で起こる事故の全容を語ってしまうのは珍しい趣向だな。実話に基づく話だとしても、普通はエンドロールだよね。

Part2はほぼほぼ中国版『タイタニック』。

生き残った人がほとんどいなかったというこの海難事故で、Part1で国共内戦を生き延びたカップルや家族の、誰が生き残るのか?

肝心の沈没シーンは、さすがに『タイタニック』ほどではないが、迫力満点だ。ただ、沈没後の人々の浅ましさは、大きく『タイタニック』を超える。ジェントルマンなんて人はなく、今でも中国人は並べないなんていわれる所以を感じさせる。

主人公の内のひとり、金城武演じる医師は、台湾人でありながら日本兵として従軍、中国との戦いに敗れて日本兵として中国軍の捕虜となり、国共内戦では蒋介石側で戦い、台湾に逃げるという、この当時あったであろう数奇な運命。こんなキャラクターを中心に据えたあたりに、ジョン・ウー監督のオール・アジアをグローバルに捉える視点がうれしい。

最初から注目してたのが、メインキャストの多くが生き残って台湾人になる人たちなのに、よく中国が作ったな、ってこと。

見る前に懸念した政治的な偏向は、実はあまりなかった。もちろん、「また共産党狩りだ。学生ばかり捕らえて、みんな生きて戻ってはこられんな」なーんていう台詞や銃殺シーンなど、国民党批判ぽいシーンもあったけれど、抗日戦は描いてもきつい反日シーンはなかったし、思ったほど政治的なプロパガンダはなかった。日本、中国、台湾、それぞれの立ち位置に翻弄された人たちの数奇な運命にフォーカスしていたのが素晴らしい。

Part1、Part2合わせて4時間以上の超大作。ずっしりとした見応えのある作品だった。
KUBO

KUBO