アーリー

アイネクライネナハトムジークのアーリーのレビュー・感想・評価

4.0
2023.6.5

主演三浦春馬。それだけで悲しくなってしまう。

伊坂幸太郎の原作を鈴木謙一が脚本にし、今泉力哉が映画化。原作は未読。群像劇で全登場人物が絶妙に繋がってる上に、セリフまでもが時を超えて、そして意味を帯びてかえってくる。人々の関係、暮らしの移り変わり。何気ない瞬間を垣間見るような作品。

貫地谷しほりとボクサーの恋愛が急展開すぎたのが気になる。電話で話してるだけでそんなことになるかな。それともそういう時代やったのか。この2人の出会いから始まり、そしてその出会いから広がっていく物語。今生きている中で毎日淡々と過ごしていても、それがどんなに面白みのない生活でも、ちょっとしたことが誰かに影響を与えてるし、与えられてる。たとえ誰とも会っていなくても、それはそれで影響はあると思う。いい影響だけじゃないのが現実の辛いところやけど、それでも生きていくというのはそういうことなんやろうな。
 人間としてこの時代の日本でたまたま生まれた。たまたま同じ地域に住んでたから学校で出会って友達になったり、恋人になったり。たまたま持ち合わせた学力に合わせた大学に行き、たまたま地元の友達とシェアハウスをする条件が揃った。たまたま映画を好きになったから映画関係の職を志し、たまたま良さそうなワークショップがあったから東京に来て、たまたま選んだバイト先でまた新しい出会いがあった。出会いはたまたまでその繰り返し。もし違う場所で生まれていたら、それはそれでたまたま出会った人と友達になったり恋人になる。運命の出会いとロマンチックに表現することは出来るけど、やっぱりたまたま出会っただけで、どこかで少しでも違う行動をしたり、誰かに違う行動をされてたら、全然違う人と出会ってたはず。だからこそ今作で矢本悠馬が言った、出会ったのがこの人で良かったと思うことが大事、というセリフがグッとくる。全部たまたま出会ってしまったんやから、それを少しでも多く良かったと思える出会いに出来たら幸せなんやなと思わせてくれた。
 けど三浦春馬の自殺を考えると結構難しいことなんかな。悲しい出会いはいっぱいあるんやろうし。

大きな展開があるわけではないけど面白かった。今泉力哉らしさは感じれてないけど、脚本は別の人やったし仕方ないか。
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