こなつ

家へ帰ろうのこなつのレビュー・感想・評価

家へ帰ろう(2017年製作の映画)
4.0
2018上映、アルゼンチン/スペイン合作。
公開当時、劇場で観られなかったので配信にて鑑賞。

アルゼンチンの人気脚本家パブロ・ソラルスによる脚本・監督作。自分の祖父の家が「ポーランド」という言葉がタブーだったところから発想を得たとのこと。

ユダヤ人迫害という重いテーマで描かれているのだが、悲惨なシーンも少なく、ユーモアと温かさに満ちた感動的な作品に仕上がっている。

ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人が、70年の時を経て、友人との約束を果たすためにアルゼンチンから故郷ポーランドへ旅する姿を描いたロードムービー。

ブェイノスアイレスに暮らす88歳の仕立て屋アブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)は、自分を老人ホームに入れようとする子供達から逃れ、故郷であるポーランドを目指して一人旅に出る。

その旅には、ユダヤ人である自分を救ってくれた命の恩人、親友のピオトレックに会いに行き、自分の仕立てた最後のスーツを渡すという目的があった。

嫌な思い出しかない「ポーランド」と「ドイツ」という言葉は口にも出したくない。紙に書いて伝える。

偏屈で頑固者のアブラハムがマドリード、パリを経由してワルシャワに向かう道中では様々な困難が襲う。収容所時代に傷めた右脚を引きずりながらも、行き先々で人々の優しさに触れ、次第に柔和になっていく様子が丁寧に描かれている。

飛行機で隣り合わせた青年、マドリードのホテルの女主人、パリからドイツを通らずにポーランドへ列車で行けないかと、パリの駅で案内人に頼んでいたアブラハムを助けようとするドイツ人の文化人類学者イングリッド、ドイツ人ばかりの電車の中で幻想に悩まされ倒れて緊急搬送されたポーランドの病院の看護師ゴーシャ。みんなとても温かい。

何十年も経過しながらも消えることのない悲しい戦争の傷跡を乗り越えて生きようとする老紳士の人生の旅は、ラストシーンで涙溢れる奇跡の瞬間を迎えた。

おすすめの感動作です。
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