真田ピロシキ

ヘルボーイの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ヘルボーイ(2019年製作の映画)
3.6
イカした狼男映画『ドッグ・ソルジャー』や地底人映画『ディセント』などクリーチャー表現には定評のあるニール・マーシャル監督だけあって人外ヒーローヘルボーイを始めとしたキャラクターが映える。巨人3体との戦闘シーンはカメラワークが冴えてて特に目を惹くシーンとなっている。ゲームの巨大ボス戦を想起させるのでゲーマーにもオススメだ。ここが印象的なのは全体的に夜のシーンが多いのに対して日中なのも大きく、ヘルボーイが存在を隠匿されているなら分かるが一般市民に普通に知られているのにこうもバットマンみたく夜属性を割り当てられているのはちょっと不思議に感じられる。

ニール・マーシャルと言えばゴア表現も特色であるが本作でもそれは遠慮なし。いきなりアーサー王に首を刎ねられるミラ・ジョヴォヴィッチ演じる魔女ニムエから始まって、人体のオブジェ化が激しい。ニムエさんは復活してからも体を縫い合わされたり、頭半分ふっ飛ばされて目玉プラプラさせたり、終いには生首を溶岩にポイ捨てされてて悪趣味極まりないリョナ映画として嫌悪する人も少なくはないと思われる。個人的にはこうしたグロ要素はもう好きではないのだけれど、巨人が食料の人間を積み上げていたりヘルボーイがエクスカリバーを抜いて地底から現れた巨大怪獣達が足に人間突き刺して歩く姿はシュールで笑ったし、知性を持ち合わせているのか分からないこいつらの行動からは短いながら世界の脅威を存分に表現されていたように思う。

ストーリーはニムエさんの婚活を眺められる。目当てのヘルボーイ君の気を引くためにヘルボーイに恨みがある豚さんをけしかけたりお父さんを誘拐したり、その他ではやたらと運命を強調して結ばれようとしててストーカーのようだ。そりゃ首刎ねられますよ。ニムエは1500年前アーサー王に騙し討ちされてて、現代の世でも英国の秘密結社オシリスクラブが巨人狩りの最中ヘルボーイを後ろから討とうとし、またヘルボーイが父親に「人間は魔物を殺してばかりだ」と言わせているように人間の非が語られているのだが、その辺に答えを用意してたとは感じられない。人と悪魔の子であるヘルボーイが架け橋というベタな考えがあるのだけれど、本作の時点ではヘルボーイは少し悩みはしても人間の味方で、と言うのもニムエ以外に出てくるのもバーバ・ヤーガみたいな人間的価値観持っていると到底相容れない奴らであるために掘り下げようがなかった。仲間もデル・トロ版と違って人間なのでパンチが弱い。一応ダイミョウが変身するというのはあるがアイデンティティは疑いようもなく人間。こういう所がデル・トロ版との比較や昨今の多様性を重んじられる映画の風潮を鑑みて低評価を下される所以かと思う。だけど私的にはニール・マーシャル映画としては十分な内容だったので嫌いではないです。でも本編終了後3回もオマケ映像入れてたのはこのジャンルの寒いお約束に忠実すぎて少し評価を下げた。エンドロールは流してるだけで見てなかったがそれでも呆れる。