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ライトハウスの821のレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.5
狂気の映画。正方形に近いアスペクト比で始終圧迫感を誘う。冒頭から低く鳴り響く汽笛の音と、群れるカモメの鳴き声が何かの凶兆のように思えました。とにかく、初っ端から薄気味悪い。
完全に俗世と遮断された”Rock“に取り残された2人を徐々に包んでゆく狂気。理性が排除され、濾されたかのような純粋な「本能」と「欲」が際立っているような気がしました。
きっとギリシャ神話や西洋の船乗りの迷信が作品の根幹にあるんだろうな、ということはうっすら分かりました。でもとにかく難解で、ウィレムデフォーのセリフは右から左にひたすら流れ…。途中睡魔に襲われたんだけど(持ち堪えた)、これは「退屈」というよりむしろ、余りの不快さに私の脳が処理を拒否してシャットダウンしようとした感じでした。防衛本能で眠くなる的な。久々の感覚でした。

とにかく、私にとっては「不快」と「気味の悪さ」が強く印象づいた作品でした。
でも、狭い画面で白黒だからこそ際立つ作品の美術は圧巻だった。光と影の使い方、限られた画角にも関わらずハッとさせられる構図。制約を課したからこそ際立つものがありました。そして、要所要所でうんと昔の映画を見ているような気分にもなりました。

好き嫌いで言うと嫌い寄りの作品でしたが、あの閉鎖空間でこちらも映像とひたすら向き合わなければならないプレッシャー、そして追い討ちをかけてくる、腹の底に響く禍々しい音響で、観てる方も作品の中に埋没していくような感覚を知ることができたので、劇場で見て良かったです。凄まじい映画体験でした…。

(総括: 「よく意味がわからないが、兎に角不快な映像と音響に逃げ場のない空間で身を晒し続け、それが苦痛でありつつも最高の映画体験だった」というマゾ体験。)
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