回想シーンでご飯3杯いける

シシリアン・ゴースト・ストーリーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.8
イタリアで実際に起きたマフィアによる児童誘拐事件を題材にしているはずなのに、冒頭からシチリアの自然と、そこに住む少年少女の初々しい姿が映し出され、その魅力に吸い込まれる。

13歳のルナが同級生のジュゼッペにラブレターを渡す。そしてファーストキス。しかし、その翌日にジュゼッペが突如姿を消してしまう。

本作が異色なのは、誘拐事件をサスペンスとしてではなく、少女の前に起きた理解不能な現象として描いている事。キスの続きを夢見る少女にとって、その異変はあまりに不可解で残酷。しかし大人の世界や犯罪の世界を知らない彼女は、その全貌を想像する術を持たず、悪夢や幻に悩まされながら、真相解明に向けて凛として立ち向かっていく。その生命力に満ちた姿は感動的だ。

中盤まで、事件を少女の目線から描いた事で、その全貌が明らかになっていく終盤が絶大なインパクトを持つ。「この世界の片隅に」や「ライフ・イズ・ビューティフル」といった庶民目線のコミカルな映画が反戦映画として大きな意味を持つように、少女目線で描いた本作も、事件に対する作者の怒りを強く感じさせる作品になっている。