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チャンブラにてのSY3KRのレビュー・感想・評価

チャンブラにて(2017年製作の映画)
3.5
イタリアの新鋭:ジョナス・カルピニャーノ監督が、イタリア南部に暮らすロマ人のコミュニティにスポットを充てたドラマ。

本作は実際にロマの人々が暮らすカラブリア州にて撮影された。監督は自分の盗まれた車を取り戻そうとジプシーのキャンプを訪れ、そこでピオに出会ったそうだ。そして彼をそのまま映画の主人公としてキャスティングした。ここまでくると、もはや本作はリアルなドキュメンタリーだ。

小さな共同体で暮らすロマ人の貧しい生活、生き延びるために犯罪に手を染めなければならない実態、その全てがあまりにも衝撃的で目眩がする。ピオは僅か14歳だが、犯罪に手を染めることに躊躇がない。この生き方を更に下の世代が模倣し、負の連鎖は未来永劫続く。

そもそもロマ人は14世紀からイタリア半島に移住しており、自国の民族の一部のはずだ。しかし彼らに対する弾圧・迫害はムッソリーニからベルルスコーニ首相へと受け継がれ、今もなお止むことはない。ちなみに現在の首相メローニ氏は、ムッソリーニの政治を理想と崇める極右派で知られる。この状況を作り出しているのが自分たちであることに、なぜ誰も気が付かないのだろう。

また、カラブリア州はあの凶悪な犯罪組織ンドランゲタの本拠地だ。警察や議会とまで癒着する有り様だから、司法が正常に機能しているとも思えない。個人的にはこうした政治や司法の腐敗まで含め、もっと骨太に語って欲しかったのだが、このテーマを映画として取り上げただけで見る価値の大きい一作だ。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:90%
・観客支持率 :77%
「本作は力強い登場人物の探究であり、単なる青春ストーリーになりかねないところを、魅力的なキャストに任せることでゆっくりと燃え上がっていく。」
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