Inagaquilala

ザ・プレイス 運命の交差点のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.1
とにかく作品の舞台は、「ザ・プレイス」というカフェから1歩も動かない。その店の奥の席に陣取る1人男。そこで食事も摂り、店がクローズするまで、その席に座り続ける。その間、彼のもとへ、何人もの人間が相談に訪れる。いずれの人間も何らかの願望を持っており、それを達成するためには、どんな行動をとったらよいのか、男に指南を仰ぐ。しかし、そこで男が傍の分厚いノートを調べながら発するのは、いずれも犯罪にもなりかねない「悪」を伴う行為だ。自らの運命を変えるには、他人のそれも変えなければいけない。プラスを得るには、どこかでマイナスを生まなければいけない。男が繰り出す無理難題は、そう言っているようにも聞こえる。

「おとなの事情」で、携帯電話を巧みに使い、男女7人のブラックなコメディをつくり出したパオロ・ジェノベーゼ監督が、またもや絶妙のワンシチュエーションドラマを見せてくれる。元になったのは、アメリカの大ヒットドラマ「The Booth 欲望を喰う男」という作品らしいが、このある意味で異色の群像劇を見事にまとめあげている。男を「神」に置き換える見方もできるが、相談内容はいかにも人間臭く、それに対応する願望実現のためのミッションも一体どのように実現するのだろうという興味も誘う。カメラはカフェから出ることはないのに、これほどまでに濃厚な人々の人生を見せてくれるとは、とにかく驚きのドラマだ。パオロ・ジェノベーゼ監督が、次にどんな作品を見せてくれるのか、興味は尽きない。
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