ひでG

教誨師のひでGのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
4.0
この物語には、結論も終わりもないのかもしれません。
それを制作した人たちも分かっていたのでしょうか。

その証かのようにラストにクレジットタイトルが流れ、主人公の教誨師は、、、、
なんとも不思議な、晴れないラストシーンです。

物語はほぼ全編大杉漣さんの教誨師、(神父じゃないよ、牧師だよ🙂)と、6人の死刑囚との会話から成り立っています。

蓮さんのことは後述するとして、この6人の死刑囚を演じる役者さんたちが素晴らしい!

後から気付いた、あの烏丸せつこだったの!の大阪のおばちゃん、
光石研の表面的には当たりのイイヤクザ。
神経質で当初無言だった古舘寛治。でも、口を開くと恐ろしいほど利己的。

内気な善良そうなお父さん、なぜ彼が殺人を犯したのか。

そして、物語全体のキーとなる2人。
文盲のホームレス老人。騙されても恨まない老人の望みとは。

もう1人、実際に起きた無差別殺人犯人を想起してしまう高宮。
彼は独悪な理論で自分の殺人を正当化しようとする。教誨師の言葉を嘲り、反論してくる。
「牛や豚を食べてなぜイルカは殺していけないのか、知識が高いから?俺も知識の低い人を殺してなぜいけないのか?」と。

高宮を演じる玉置玲央という新人の役者さんの存在感、イラつき感が
半端ない。

彼らの言葉は真実なのだろうか。
彼らの言葉に悔いや反省はあるのだろうか。

そして、罪は赦されるのか、神は彼らにどんな言葉を用意するのだろうか、

そんな難題なら1人で立ち向かう教誨師を演じる大杉漣。

長い下積みを経て、中年になってから世に出てきた今は亡き名バイプレイヤーが、
初めてプロデュースした。

大杉漣さんは、多くを語らず、ゆっくり囚人たちの側で話に耳を傾ける。

彼ら囚人の言葉を受け止めるなんて、到底できない仕事を、
ストレスマックスの仕事を、
役者として深く刻まれた年輪を、熱くならず、さりとて冷静てもなく、
ありのままの役者大杉漣として演じる。

これは心底疲れるお仕事を自らを試すが如く選んできたんだな〜
凄いな、大杉漣さん!
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