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氷上の王、ジョン・カリーのkassyのレビュー・感想・評価

氷上の王、ジョン・カリー(2018年製作の映画)
3.3
試写会にて。

昔の男子フィギュアスケートは力強さ・ジャンプが重視され、そんな中美しさ芸術性を重視したスケートをしてインスブルック五輪で金メダルを取ったのが、イギリスのジョン・カリー。その栄光と孤独のドキュメンタリー。日本のフィギュアスケーターである町田樹君が学術監修もしています。

現代の競技フィギュアは採点ルールが明確化され、4回転を何種類も跳ぶジャンパーが多いが、スケーティングの美しさというのは今日でも必要不可欠な要素である。30〜40年前に活躍したジョン・カリーのスケーティングは、今見てもとても滑らかで体の線はしなやかで非常に美しく、初めて見たがこれは伝説的である事がはっきりとわかった。

ドキュメンタリー全編を通してゲイである彼のパーソナリティーや当時の時代背景がかなりピックアップされている。今も同性愛者が多いフィギュア界であるが、当時はかなりの反響であったことは想像に難くない。
そうしたセクシュアリティや醜聞が取り沙汰されながらも、ドキュメンタリーの中の彼の表現したフィギュアショーの素晴らしさが際立ち、また芸術家はかくも孤独なのだということを思い知らされる。
ジョン・カリーの事は知らなかったが、フィギュアショーの芸術性は今見てもとても素晴らしかったので必見である。もっと綺麗な映像で見てみたかった。

劇中では、日本公演に招かれた様子も入っているが、これが30年前の日本のセンスか・・・と頭を抱えたくなるほどの代物で、芸術家ジョン・カリーのプライドを激しく傷つけたのかと思うと、日本人として恥ずかしくなった。

ただ、この時から30年以上も経って日本も男子フィギュアの人気が高まりフィギュア観戦の質がこの時よりは上がっているし、今はこんな興行はさすがにしないであろう事が、時の流れとフィギュアの地位向上を感じさせた。
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