デニロ

人間の時間のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

人間の時間(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『鬼畜大宴会』『セブン』『野火』『軍旗はためく下に』というイヤーな作品を思い起こしてしまった。手塚治虫の「ロストワールド」の植物人間もみじさんの悲劇も。キム・ギドク監督のことだから、キリスト教のことなど何も知らぬのですが、何か元の話があるのだろうとは思うけれど、ラストのタイトルロールでヒロイン藤井美菜の役名がイヴということなので、え、これがエデンの園と言う訳ですか、と思った程度。

オダギリ・ジョーと藤井美菜の新婚夫婦が軍艦クルーズに乗って新婚旅行。乗り合わせたのが国会議員、ヤクザ集団、ヤンキー集団、娼婦集団、恋人カップル等々。国会議員がポケットに手を突っ込んで突っ立っている姿を観て、なんだかあやしい映画だ、と感じ始める。徐々に居心地の悪さを感じ始め、ヤクザ集団とヤンキー集団の安上がりの性欲満足の凌辱合戦が繰り始めるころから物語はなくなる。金のある者は娼婦を買い、金がなくなれば凌辱する。性の狂宴。

果たして局面が変わると性欲から食欲へと変わる。暴力によるヒエラルキーの確立。男の食欲を満たすために自らの肉を差し出す女が、その男の食欲が満たされるや否や次は性欲の対象になる。もはやその狭小さを笑うしかないのだが、果たして自らを振り返ると。

そんな情景をじっと見ている物言わぬ老人は何者でしょうか。『女子―ズ』出身唯一の汚れ役を演じた藤井美菜はエロさ満開。そしてオダギリ・ジョーは何のために出演したのでしょうか。

映画館の外では武漢発のコロナウィルスの目に見えぬ恐怖が忍び寄っていたのだが、本作を観ている間はそんなことをすっかり忘れていた。
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