真田ピロシキ

ソニック・ザ・ムービーの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ソニック・ザ・ムービー(2020年製作の映画)
3.7
赤いヒゲの配管工なんかよりずっとクールな音速ハリネズミとして出ておきながら最近ではそのヒゲと東京オリンピックのオフィシャルゲームに出るという色んな意味で堕落したソニックさんの実写映画。まず映画が始まる前にSEGAの凝ったロゴを拝ませてもらえて素敵。あの「セーガー」という音声が流れないのが残念だが。ところでああいうロゴを作ってるのは最早ゲームハードは諦めたセガですが今後自社コンテンツを積極的に映画化していこうと考えているんですかね。個人的にはサクラ大戦やスペースチャンネルを希望します。

ソニックの特徴と言えばこっちの視覚が追いつかない超スピードであるのだけれど、本作におけるその演出はあまり感心できない。X-MENの二番煎じなのですもの。しかもそれを何度もやる。確かに時代の先端を突っ走っていたはずのソニックが人の後塵を拝しているのは頂けない。しかもソニックが洞窟で読んでたコミックがDCのフラッシュで、そこでX-MENならまだ堂々とオマージュを表明してると取れたのだけれどこれでは後ろめたさを隠すために見える。ストーリーも宇宙から地球に逃げ延びてきたソニックの孤独についてでそれはそこそこ感情に訴えてはくるものの、既視感は否めなくて果たしてクールな音速ハリネズミのストーリーがそんなメソメソしてて良かったのか疑問。

ソニックだけだとやや期待外れであったが、X-MENパク…オマージュで起用されたのかジェームズ・マースデンの完璧な好青年振りでかなり救われた。あんな怪しい宇宙人を動物愛護家という描写はされていたが初対面から体を張って助けても説得力を感じるのはこれまでマースデンさんが役で培った人徳。ジム・キャリー演じる宿敵ドクター・エッグマンもその深みのなさが素晴らしい。こういう映画ですらヴィランとカテゴライズされる連中はつまらないシリアス野郎にされがちな時世であるが、このジム・キャリーの間違っても賞なんか狙ってない気負わないコメディ悪役には好感が持てる。やはりまだゲーム映画には真面目になり過ぎない余地が残っている。こういうもので良いんだよ。アクションがメインでストーリーは添え物のゲームなのだから。

地球からの退避先に決めていたのが何もなくてつまらないというキノコの星であるがこれってやっぱり任天堂のヒゲを揶揄してる?本家のゲームの方ではすっかり牙を抜かれたソニックだがこっちではまだ闘志を燃やしているのかもしれないと思うと熱い。少なくとも昔のヒゲの映画よりは比べ物にならないほど面白いですし。当面のライバルは黄色い電気ネズミでしょうか。続編やるつもり満々なので頑張って欲しいね。