はる

バーニング 劇場版のはるのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
5.0
ビニールハウス。。
『シークレットサンシャイン』が意外と自分にはヒットせずイチャンドン合わないのかなと思っていたんですが、本作を観たら隅から隅まで全てツボに入ってしまいました。めちゃくちゃ好きな映画ですコレ。
主演は『ベテラン』での悪役っぷりが印象深いユアイン。脇を『ウォーキングデッド』でお馴染みのスティーヴンユアンと本作がデビューとなる驚異の新人チョンジョンソが務めます。
ユアイン演じるジョンスは作家志望のフリーター。ある日街で偶然幼なじみのヘミと再会し、ちょっと良い感じの仲になります。しばらくするとヘミはアフリカに一人旅に出かけ、帰国の際ジョンスが空港へ迎えに行くと、ヘミはアフリカで出逢ったベンという男を連れて空港に現れるんですよ。ベンは若くしてかなりのお金持ちなので、ジョンスは気後れするんですが、この辺りの絶妙に居心地の悪い空気感の演出なんかは素晴らしいと思います。ベンのキャラクターもこの居心地の悪さに拍車を掛けていて、人当たりが良く、親切なんですが、謎に包まれており目が常に笑っていない感じが何とも不気味なんですよね。とはいえ特に何か起こるという事もなく、中盤までは比較的緩やかにこの3人の三角関係を描きながら物語は進んで行きます。
映画も折り返し地点あたりでジョンスの田舎にベンとヘミが訪ねてくるシーンがあります。酒を飲み、大麻を吸い、そしてヘミが踊るとても美しいシーンの後に、ベンがジョンスにこんな事を話し出します。「僕は時々ビニールハウスを燃やしているんですよ」と。ここから映画のトーンがガラッと変わり、三角関係からノワールに様変わりします。少しずつ物語の真相が見えてくると実は前半の何でもないように見えていたシーン全てが伏線だった事に気付かされ、鳥肌が止まらなくなってきます。引き出しの中身、そして猫、パンドラの箱を開けてしまったかのような後半の展開がとにかく恐ろしく、同時に映画としてあまりの出来の良さに感心しっぱなしでした。ラストのとあるシーンで解釈が色々と分かれるので、観終わった後も深く長い余韻に浸る事ができます。
この先どう転がって行くのか分からない映画というのが本当に大好物で、本作もそういう意味でめちゃくちゃ面白く、撮影も抜群で額縁に入れて飾りたいほど美しいシーンを用意してくれています。格差を一つのテーマとし、何よりビニールハウスという揶揄が最高に不気味で素晴らしい。イチャンドンのまだ観ていない作品を今後観て行こうと思いました。
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