にしやん

ビリーブ 未来への大逆転のにしやんのレビュー・感想・評価

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)
4.2
或る性差別税法に対してその不合理性を法廷で争い、アメリカ史上初、当時100%不可能と言われとった性差別法の違憲判決を勝ち取る女性、ルース・ギンズバーグの半生や。
主人公が入った当時のハーバードの法科大学院に女性トイレあらへんとか、女性は職に就かれへんとか、クレジットカードでさえ作られへんとか今考えたら滅茶苦茶やな。1956年ってわし生まれる11年前やで。考えられへんな。自由と民主主義の象徴(皮肉も込めて)のあのアメリカでさえこんなんやもんな。日本なんか推して知るべしやな。
そんなん考えたら、確かに社会は進歩してるわ。空いた口が塞がらんようなアホな性差別は無くなってるわ。大学に女性トイレあるし、女性も普通に働いとうし、クレジットカードとかも普通やし。でもな、そんな当たり前のことが当たり前になるんがどんだけ大変なことなんかを気付かせくれたわ。もしこの稀有な女性法律家がおらんかったとしたら、何かぞっとしてもたわ。
政治行政や経済を変革させる三原則みたいなもんがもしあるとしたら、一つには時代の流れやその時々の世論、二つには強い信念と斬新なアイデアを併せ持つリーダーの存在、それと三つにはそのリーダーをしっかりと支える家族や周りの理解者の存在やろな。この物語にはその三つがちゃんと揃ってるわ。
とにかくこの主人公が強過ぎる。まず、学生同士で結婚して子供産んでるやろ。それも中々やけど、旦那病気になったら、旦那の代わりに講義出てノート取って、それ旦那に教えた後、旦那のレポート口述筆記して、それ終わってから自分のレポートやってるねん。それも育児しながらやで。ほんまにそんな奴おんのかいな?いったいあんた、いつ寝てんねん?って、思わず突っ込み入れてもたわ。
旦那もなかなかええで。この人どっかで観たなと思たら「Call me by your name」の俳優さんやんか。声ですぐ分かったわ。押し付けがましいとこがいっこもあらへんねん。奥さんにも子どもにもそっと寄り添っとう感じやな。奥さん不本意就職決めてきた時、娘慰める時、模擬裁判の時もな。エプロン姿や包丁裁きもめっちゃ堂に入ってるわ。立派なもんやで。
娘も完全にオカンに似てて凄いぞ。まだまだ子どもやのに、オカンに法律論争仕掛けるは、国家権力に立ち向かおうとするオカンを奮い立たせたりもしてるで。
逆にハーバードの学部長がめっちゃクズやった。ほんま嫌味なオッサンや。ハーバードのロースクールに女子学生入れるんに10年掛かったとか自分のさも手柄やみたいに自慢しといて、実際入ってきた女子学生に向かって男子押し退けて入っきた理由言えって。あんた、それは無いやろ?ハーバードのイメージ悪過ぎやわ。そんなことばっかり言うてたらハーバードかて日大みたいになんで。せやけど、このオッサンが後半のポイントになってくんねんからそれもまた皮肉なもんや。
最後は映画のタイトル通り起死回生、まさかの大逆転で観てるもん皆スカッとすんねんけど、そこで終わってしもたらあかんと思うわ。なんで今こういう映画が作られてんのかっちゅうこっちゃ。まだまだ性差別の問題が解決してへんからやろ?世界的に広がるMeToo運動なんかもそうやし。日本なんかでも「男は外で仕事、女は家で家事育児」って考えがまだまだめっちゃ根強いで。扶養控除の年間130万円規定とかおかしないか?厚生年金の3号規定もおかしいんちゃうの?税制や年金制度が「男は外で仕事、女は家で家事育児」っちゅう男性中心の古臭い固定観念そのもんを下支えしてるんとちゃうか?こんなんでほんまええんかいな?日本の女性かてこの映画観て感動してるだけやのうて、その中から一人でもええからルースみたいなタフでユニークなリーダーが早いこと出てきてほしいわ。ほんまお願いするわ!わし応援するさかい。
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