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幸福なラザロのrosechocolatのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
4.1
一体何世紀の話だろう?と混同させるところまで恐らく計算されており、全容が明らかになるにつれてこの設定の恐ろしさがわかってくる。現実、こんなことってあるのだろうか?とも思うが、もしかしたら世界には存在しているのかもしれない。

過去のどの時代にも、ラザロの如く「搾取され尽くされる」人物は存在していただろう。しかしながらその運命を理不尽に感じながら生きた人が殆どではなかったのではないか。邪険にされ蔑まれても、相手に従ってしまうのが哀しい習性なのに頷き続けるラザロ。

情報のない環境で育ち、守ってくれる者もいない彼にとっては、自分と繋がりのある者の出現は絶対的であり、判断基準はそこになっていくのも無理もない。ただひたすら相手を信じても、その先は無慈悲しか残らないのだろうか。全ての、純粋に生きたい人々は報われずに終わるのだろうか。魂だけしか真っ直ぐに生きられないとしたら、それは哀しすぎるけど、現代にも通じるのだろうね…。

途中、時系列が交錯するが、それも演出のうちで、おとぎ話的にする事でラザロの精神と運命の相反するものが浮き彫りになっている。お見事です。
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