ペイン

存在のない子供たちのペインのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.0
是枝監督『誰も知らない』の超ハード版と聞いていたが、本当にそうだった。

もっと遡れば、“判ってくれない大人たち”に向けられた反発を描いた『大人は判ってくれない』や、“究極の餓え”を描いた『自転車泥棒』や『ドイツ零年』などのイタリアネオレアリズモ映画にも通低する。この系譜の映画は挙げれば枚挙に暇がないが、その最新版という意味で本作は必見である。


劇中で扱われている社会問題は、少女の強制結婚、子供の人身売買、不法移民など、正直言って日本にはなじみの薄いものが多い。私はこれを観て明日から何かボランティアしよう!とか、一日一日を懸命に生きよう!みたいに襟を正せるような殊勝な人間ではない。それにも関わらず「他人事」に思えないのは、育児放棄や虐待のニュースが後を絶たない日本の現実と呼応するドラマでもあるから。


過酷な現実を捉えるドキュメンタリックで生々しい撮影、それに反して映し出される子供たちの顔、表情のなんとキュートだこと。その殆どのキャストが映画初出演で演技経験の無い素人である点もイタリアネオレアリズモ映画と共通。演技をもはや超えています。


映画なんだから夢を見させて!というのもわかるが、やはりたまにこういう作品を観ることも大事だと思う。観終わった後に“如何に自分が幸福か”ということを身に染みて感じられるという意味ではエンターテイメント超大作を観る以上のカタルシスがあると私は思う。



※以下ネタバレ


終盤、主人公のゼインが赤ん坊のヨナスと別れる際のセリフと音楽一切なしの目だけのやりとり、演技は鳥肌もの。下品な映画はここで泣き叫んだり過剰にメロディアスな音楽が流れる。
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