なっちゃん

存在のない子供たちのなっちゃんのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.0
舞台はレバノン。どこ?カルロス・ゴーンがいるとこということしか知らんかったけどトルコの下でシリアの左。地中海に面した国でした
海がある国は豊かになるって大河ドラマで斎藤道三も言っていたので地理的にはよさげ、しかも産油国。いいな〜。かつては中東のパリとまで言われたそう。ただし2011年からのシリア戦争の影響でシリアからの難民(100万人)が全体の1/4を占めるとか。短期間の人口変動で政治も追いつかず国内はめちゃくちゃに。
現にいまは外貨建て国債12億ドルが債務不履行状態らしい。石油も低迷してるしどうするんだろうゴーン…

そんな国なので社会保障インフラが固められた日本の私が見たら衝撃ポイントがかなり多かった。

例えば主人公ゼインは妹(どう見ても子ども)をバイト先の店長から必死で遠ざけます。あと妹の初潮をめっちゃ隠す。
「…??」と思っていたけどその後バイト先の店長に妹が売られる!という話が始まって衝撃。発想がなかったわ。
調べてみるとそういうことがあるらしい。
https://www.huffingtonpost.jp/2015/12/14/heartbreaking-reality-about-child-brides-in-lebanon_n_8802872.html
18歳以下の少女による妊娠、出産は様々なリスクを伴うことが科学的にもデータからも明白なわけで。しかも初潮云々言ってるのがキモすぎる。

あとは不法移民の女性が捕まってしまい、留置所のトイレで母乳を絞るシーンがあり…なにやってんの?と思いましたが
不法移民の女性による出産は違法らしく、バレると子どもを取り上げられるそうで隠すための行為だったんですね…
世の中知らないことだらけやな…

映画の主軸としてはゼインの「僕を産んだ罪で両親を訴える」というもの。
ゼインの家庭は既に大家族で、狭い家にひしめきあって暮らしている。
経済状況はゼインが学校にも行かず働かなくてはいけないほど。にもかかわらず母親は現在妊娠中…

何が原因でどう解決できるんだろうなと思うけど、背景が途方もなさすぎて考えたくなくなるな。
どこを改善すればいいのか?両親?政治?社会の意識?

こういう作品に触れるといつもNARUTOの「逆だったかもしれねえ…」と上野千鶴子の東大祝辞を思い出す。
うちらが安全に生きているのはたまたま環境がよかったからであって、いつだって他人事ではない。
今も新型コロナウイルスの影響を受けて失業している人がいるわけで、(しかもレバノンよりもっと近くに)少なくとも自分が自分の力だけで生きていると思わないようにしようと改めて
そういう風に全員が思えたら人類規模でステップアップできるんかもな〜と思う
なっちゃん

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