磯野マグロ

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話の磯野マグロのレビュー・感想・評価

3.2
原作が好きで、ずいぶん前に読んだのに、そのときの衝撃をいまでも覚えてる。
映画は感動ドラマの皮をきちんと被っているので、あまり悩まないで見ていられる。一方、原作は読むとかなり悩んじゃう内容。めちゃくちゃにエグいし、グサグサくる。ボランティアをする人には、ボランティアをせざるを得ない事情や生き方があるというか、上から目線や逃避としてのボランティアの危険性というか、人助けですみたいな甘い考えで来るとボランティアの獣道で痛い目にあう(ほんとに人助けしてるはずなのに!)。介助する・されるという関係は一方通行だけど、助ける・助けられるという関係は、簡単に逆転しうる。ここでは常に逆転していると言ってもいい。自分の偽善とか欺瞞を過剰に意識させられる。他人にお金を貸す、という行為に似てるところがあるかもしれない。
そんな葛藤を、分量としては少しだけでもいいから、深いところまで掘り下げてほしかった。というかそれがないと、ふつうの難病ものと変わらない。せっかくこの原作を映画にした意味ないし。
原作者の渡辺一史は、ほかの本もおもしろいからぜひ読んでみてほしい。
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磯野マグロ

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