みとも

月島狂奏のみとものレビュー・感想・評価

月島狂奏(1994年製作の映画)
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 とある一家と、その子供たちと恋人たちのドラマが月島という特定の場所で展開する。川を臨む高層住宅に住む彼らも、再開発によって元々住んでいた家を追われたと思しい。別段仲の悪い家族であるようには見えないが、映画には直接登場しない父の入院をキッカケとして家族や恋人同士の関係がやや崩れ始め、その緊張と摩擦は隅田川の花火大会において頂点に達する。現実の花火大会とその賑わいの中でドラマを展開させるドキュメンタリックな手法はいかにも自主映画である。終盤の、カットを割るのではなく、むしろパンでカメラを動かしてワンカット中に収める(母親と叔父の車が発進、自転車に乗った妹、妹の恋人を追う兄……)撮影が上手かった。居間にテレビと食卓のテーブルが置いてあるだけの生活感のなさ、高層マンションのような、大きな存在感だが物体であるゆえ何かを発することもも絶対に無いというような被写体を撮影するときの違和は、『GANTZ』等その後の佐藤信介作品にも通じているとも言えるかもしれない。
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