ひこくろ

書くが、ままのひこくろのレビュー・感想・評価

書くが、まま(2018年製作の映画)
4.3
人付き合いが苦手な中学生の女の子がいじめに遇い、クラスで孤立し、保健室の先生に救われる。
という、わりとよくあると言えばよくある話なんだけど、役者の演技がみんな素晴らしくて見入らされる。

保健室の先生を演じた長谷川葉生さんや、お姉ちゃん役の富岡英里子さんら、大人が上手いのはもちろんだが、中学生の面々の演技が本当にいい。
無邪気に人を傷つける女の子の残酷さや、いじめられたくないばかりに自分の望んでいないことをしてしまう女の子の弱さ、とか、こんなにも自然体で見せてくれるのかあ、と感心しっぱなしだった。
この子たち、おそらく実年齢は高校生以上なはずなのに、ちゃんと中学生に見えるのもすごい。

そして、何よりも目を引いたのは、主演の中村守里の演技だった。
些細な表情の変化で、いろんな感情をしっかりと伝えてくる。
繊細という言葉がこれほど似合う演技もないだろう。
いま彼女が笑っているのか怒っているのか、悲しんでいるのか、抱え込んでいるのか、それとも言葉にできないような気持ちを抱いているのか。
すべてがほんのわずかな表情と仕草からはっきりと伝わってきて、ひなのが生き生きと輝いている。
「アルプススタンドのはしの方」でも上手いなあ、と思ったが、圧倒的にあれ以上。
とてもアイドルとは思えない。ものすごい演技だった。

物語的にはどうってことのない話が、役者の力で完全に化けている。
気づけば映画の世界にどっぷりと浸かっていられる。
演技によって説得力とリアリティが生まれた、いい映画だった。
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