逃げるし恥だし役立たず

恋をしましょうの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

恋をしましょう(1960年製作の映画)
3.0
億万長者で色事も達者な青年が、身元を隠して自分を皮肉った芝居のオーディションを受け、そこでセクシーに踊る若く美しい女に一目惚れしたことから、やがて二人の間に恋が芽生える。一時熱愛が囁かれたマリリン・モンローとイヴ・モンタンと云う二大スターが共演したロマンチック・コメディ。ノーマン・クラスナー脚本ジョージ・キューカーが監督したミュージカル映画。
舞台は当時六十年代のニューヨーク、十六世紀フランスに起源を遡る億万長者で色事師としても知られるジャン=マルク・クレマン(イヴ・モンタン)は、金に飽かせた放蕩ぶりが祟り、自分を皮肉ったミュージカルが上映される事を知る。早速、敵状視察とばかりに広報担当のアレクサンダー・コフマン(トニー・ランドール)を連れてリハーサルを訪れたジャン=マルク・クレマンだったが、そこで妖艶に踊るアマンダ・デル(マリリン・モンロー)と出会い一目惚れしてしまう。彼は富豪の身分を隠して彼女に接近するが…
瞠目した演出は幾つもあるが、矢張り何と云っても、全編に鏤められたマリリン・モンローのミュージカルシーンで、「恋をしましょう」「私の心はパパのもの」などマリリン・モンロー独特の甘い声が堪能出来きて、老若男女を問わず、一目見るだけで誰もが彼女の魅力の虜になるに違いない。
ミルトン・バールやビング・クロスビーやジーン・ケリー達の無駄に豪華な脇役と煌びやかな演出の一方で、肝心のドラマ部分の焦点がボヤけてしまっている。イヴ・モンタンとマリリン・モンローの何処か不釣合いな組合せの配役に、想いを募らせる展開が弱く現実味に欠け、結局金の力に頼りっぱなしで、ラストのオチも尻窄みと、物語自体はあまり印象に残らない。少なくともマリリン・モンローの使い方は間違っておらず、彼女もちゃんとマリリン・モンローを演じている、むしろ魅力の無い物語よりも歌って踊るマリリン・モンローが超メインの純然たるミュージカル映画だったらと悔やまれる。
演技派志向のマリリン・モンローの苦悩と葛藤を他所に、制作側の思惑通りの男性目線での不自然な程に過剰で可愛い女性のキャラクターを演じさせられていて、彼女の心情を察するに余り有るが、恋多き女マリリン・モンローが相手役の恋多き男イヴ・モンタンと本当に恋に落ちて、彼の妻シモーヌ・シニョレが自殺未遂を起こしたのだから批判も同情も成立しないか…
今も昔もマリリン・モンローのキュートな御色気だけの映画だが、当時のセックスシンボルである彼女(三十四歳)に多産系なんて言ったのは流石に上手くて唸ってしまった…