エクストリームマン

マックイーン:モードの反逆児のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

4.0
Fashion is a big bubble and sometimes I feel like popping it.

まるで絵に描いたような上昇と墜落の軌跡。浮き沈みの激しさ、あまりにも繊細で壊れやすい心、不器用すぎる人間関係…そのどれかでもなければアレクサンダー・マックイーンは自死を選ばなかったのかと考えてしまうが、そのどれが欠けても、彼の作品群は生まれなかったのかもしれない。過剰な仕事が急速な成長と洗練を齎し、仕事と期待を運び続ける。その非人間的なサイクルに耐え続ける意味や意義を見失って尚、人生を肯定し支えてくれるものに出会えるかは単純な運でしかない。そういう意味で、彼には運がなかった。この映画に“神”として登場するトム・フォードもまた、ファッション業界に心と体を壊され、自死寸前まで追い詰められていたことを知っていると、彼の登場場面もまた感慨深い。トム・フォードには、アレクサンダー・マックイーンにはない運と出会いがあったのだ。

個人的には、彼のデザインする服は奇抜なものよりもクラシカルで伝統的なデザインを発展させたものの方に才能を感じた。結局、奇抜なものばかりが(最終的に)評価されるのは、誰もが、たとえばハーブ&ドロシー夫妻やビル・カニンガムのような「目」を、即ち評価する基準と勇気を持ち合わせているわけではない、ということなのだろう。病人を演じるか激やせする(あるいはその両方)でしか(俳優は)アカデミー賞を獲れないと揶揄されるのにも似た、評価する側の程度問題もなかなか根深い。