雨虎

アラジンの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

アラジン(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

アニメ版にはなかった歌がいくつか追加されていて、よりミュージカル感が出てきた。そのどの曲も工夫やメッセージが込められており、印象強い。
"Arabian Nights"によって異国情緒を強めつつ、船乗りが歌にして子供に物語を聞かせるという場面は原作「千夜一夜物語」の閨で王に不思議な話をしたシェヘラザードの代わりを務めているように見え、素晴らしい工夫だと思う。ここはアニメ版よりも好みな音楽と映像に仕上がっていた。
また"Speechless"では女性が抑圧された時代に抗う力強い姿を表現しており、ジャスミンが危機に立ち向かうという姿は命がけで王の愚行を止めるシェヘラザードを意識しているのかもしれないとも感じた。また、ナオミ・スコットの力強い声がこの歌の内容にマッチしており、素晴らしい。
その他の歌であっても、アレンジをしていたり、CGを駆使した迫力ある映像となっておりアニメ版とは違う良さを見せている。

「ディズニーのアラジン」では「千夜一夜物語」を原案としているが、厳密に原作の中東圏の世界観を取り入れた作品ではない点も注意が必要だと感じる。例えばアニメ版の時点で既に中東圏、インド圏が混在している。実写版でもそこは変わっていない。そういう意味ではアニメ版の設定を守ったという見方もできると思う。
幼い頃に見たアニメ版「アラジン」の時は知識がなかったため何も違和感はなかったが、知識の付いた今、実写版「アラジン」は確かにやや違和感を覚える部分もある。ただ、歴史映画ではないということを理解すれば大きな問題ではなく、文化が混ざっていることで中東とインドの間の文化を持つ架空の国という印象が強くなった。
個人的には海外映画に登場する日本が中国や韓国の雰囲気と混じっている作品と同じように見えるが、そこにステレオタイプだという怒りは湧かない。理解の途中というだけで悪意はないはずだからだ。

ただ、やはりポリコレ感は強い。アニメ版に登場した表現や態度が大きく異なる。特にジャスミンはやや現代的にしすぎた印象もあり、アニメ版のようなシンプルな物語ではなくなった。

とは言え、全体的にはアップグレードして成功したリメイク作品と言ってもいいのではないかと思う。
雨虎

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